発声練習から始めて曲を4曲ばかり。
今日のポイントはお腹の使い方と、喉の意識。
どうやら、声の揺れはビブラートというより、喉を抜く傾向のようであった。
というのも、声の揺れが目立つので、なくすように、と言ってから、声の当りがとても良くなった。
特に、チェンジしてスカスカしやすい2点C~が、声がビンビン当たるようになって
まるで別人のようなのである。
単に喉の使い方の問題で、平たく言えば今までより喉を意識した発声といえるだろう。
単に声帯が合う状態がしっかり出来てきたということだと思う。
そのため、太くしっかり当るので声量と言うか、響きが良く出るが、その分気をつけないと音程が♭気味になる。
下顎の使い方に注意して、極力響きを鼻腔に入れるような下顎の使い方を意識して欲しい。
要するに発音の際に、下顎でバクバクやらないこと。
その分、上唇や頬を使って欲しい。
特にアやエなどの母音。
また、お腹だが彼女はブレスは良いと思うが、声を出す際に、下腹部が緩んでいたようで、ただブレスが低く入るだけで
そのブレスの活力が横隔膜を活かしていない、という感じだったのだと思う。
下腹部、いわゆる丹田と呼ばれる恥骨のすぐ上部辺りをしっかり入れるようにしておくことで、直腹筋、斜腹筋、僧坊筋、背筋など
呼吸と発声に関与する筋群が緊張感を持てるだろう。
このことで、ちょっとしたお腹の意識だけで、呼気が声帯を刺激するパワーが生まれやすいのだと推測される。
今日はこの2点のおかげで、次から次へと面白い具合に譜読みが進んだ。
まるで別人である。
実際、締まって聞き苦しかった2点G以上の発声も、心なしか太さが付いてしっかりしたので聞き苦しい感じがしなくなった。
また、ベッリーニの一連の曲も、むしろ彼女の魅力的な中低音とつながりの良い中高音の声になって、幅が出来て作品の
全体的な完成度が一段アップする印象である。
後は、この調子でどんどん歌って欲しい。
お腹の使い方と喉の使い方の2点、忘れないように次回に繋げて欲しい。
さいとうさん
発声練習はそこそこに。
彼女は高音がやはり良く出るタイプではないか?と思った。
実際の歌の中では未だ色々な問題が出るが、基本的にもっと高音を歌いこむことをしても良いのではないか?という気がする。
彼女はシャイというのか、内省的というのか、身体を縦横に使うことにためらいがあるように見える。
もっともっと身体を心底から使って、いわゆるお腹から声を出すことに積極的になってほしい。
大分出来るようになったのだが、特にこれからは高音において、積極的に身体を使って欲しい。
おおぜきさんでも効果があった、下腹部の締めと同時に、胸を開くように呼気を促す、あるいは声を出す、フレージングをする
と言う方法をこれから覚えて欲しい。
普通は息を胸で吸うと、胸が上がって開いて、吐くと胸がしぼんで小さくなるのだが、声楽の場合はむしろ逆である。
息を吸うと、少し胸が開き、吐く時即ち声を出す際には、もっと胸を開いて行く、あるいは上がっていくのである。
腹筋を相当使うので、慣れないと疲れるが、慣れると声の方向性、パワー、響きの支えが生まれてまるで別物の声になる。
家では、息を吐くことで、この練習が出来ると思う。
曲はグノーの歌曲高声用の「夕べ」から。
この曲、トスティを思わせる甘美なメロディ。
譜読みのちょっとした違いと、発音の訂正をする程度で、良く歌えている。
高音は、直ぐにはしっかりしないだろうが、これから身体をしっかり使って歌いこむ練習を積み重ねればもっと出てくるだろう。
この2点Aの高音だけでなく、息を使ってクレッシェンドするフレージングを覚えないと、本当のホースから水が勢い出てくる
ような高音は得られない。
声質は良いから、この呼気の勢いがそのまま声になるような身体の使い方を大切にしたレッスンにしたいものである。
そのためにも「おいで!芝生は緑だから」における、フランス的な和音進行の音程の読みを確実にしたい。
和音進行が半音階的であるのに対して、旋律は斜行形である。要するに逆さの進行をしている。
音程を取り難いところもいくつかあった。
このような場合に、、なぜ取り難いのか?どうしたら取りやすくなるのか?近所にきっかけとなる音程はないか?
など、知性を良く働かせて欲しい。
それから、特にフランスものの音程は、伴奏の和音進行と密接に結びついているから、常に和音の中の構成音という
スタンスで譜読みをして欲しい。
要するにピアノの和音を叩きながら、音程を取るという練習である。
旋律だけを読んでも効果は半減するだろう。
再度の確実な譜読みを期待したい、それが完成したら次の段階に進めるから。