今日も発声に時間をかけた。実はかけないようにするつもりだった。
発声ばかりやって嫌いになってもらっても困るし。笑
なぜこだわるか?というともう少し、という感じがあるからだ。
来た頃から比べると、大分癖がなくなって、良い意味でニュートラルな声になってきている。
ただ、恐らく根本的なところで結構喉を強く使っているのだろう、という気がする。
使うんだけど、当て具合が大切。
その頃合を探さなければならない。

中音域の当りの太い声である。
声が出ているといえば出てるけども、ピッチがやや低いこと、そのためにチェンジの声とのつながりがやや悪いこと。
ハミングからしっかり出るからやはり当てすぎだろう。
声の出し始め、いわゆるアタックを柔らかく、そっと当てて、当ったら息で増幅するというイメージを大切に。
もう一点、意外と大事なことだが、ブレスから声を出すまでの、身体の使い方。

腹式呼吸ということで、お腹を膨らませてブレスしていたが、膨らませるポイントが低すぎる。
ブレスというのは単に息を入れることだけではなく、その次に出る声の状態に大きな影響がある。
端的に言って、低い下腹部を膨らませるように入れると、コントロールしようがないし、声も低い音域なら逆に喉が緊張しなくて良いのだが、高音域が出しづらいだろう。あるいは出ても重くなってしまうと思う。

下腹部、いわゆる丹田と呼ばれる所は常に少し締まった状態にしておくと、その一段上、横隔膜あたりで息が入る感じがすると思う。
あたかも、ベルトをきつく締めると、その上がぽっこりとベルトの上に乗って、そこで息を出し入れするような感じである。
そうすることで、ちょっとしたお腹の緊張具合が声にストレートに反映するのである。
このことを覚えて欲しい。

コンコーネは13番、14番を練習。
13番はとてもスムーズに良いリズム感で歌えた。14番は譜読みが少し不完全だったが元気良く歌えたので良しとしたい。
声のことはあまり細かいことは言わずに全体的な流れを大切にした。
コンコーネはリズム、流れを大切にしたい。

イタリア古典歌曲集中声用から「ガンジスに陽は昇る」
こちらは発音の間違いを直すに留まる。
OgniとかGliなどのイタリア的、ラテン的な発音の特徴を覚えて欲しい。
英語の癖はほとんどなくなったし、Rの巻き舌がとても上手い。
それで、Rの発音による喉の難さを取る練習をしてみた。

Prrrrでやっていたが、出だしは上手く行くが続かないようだ。
これは脱力と、お腹の支えによる息を流し続けるバランスだろう。
練習で慣れることだけが方法だと思う。
これが出来ると、喉ももう少し硬さが取れて柔らかい声楽的な響きになると思う。

はなむらさん

発声ではやはり中音域の力みに気をつけて、高く響かせることを練習。
声を出す際に、下顎で踏ん張らないこと。下顎はぶらんぶらんに楽に降ろしていること。
よだれが垂れるくらい脱力して開けておけると良い。
その分上顎を意識して発声して欲しい。

Bist du bei mirでは、音域の高さと発音による、喉の上がりを気を付けること。
ドイツ語というのもあるが、口を前に突き出すような発音は、喉が高音域で上がらないようにするために有効である。
それはアヤエなどの開母音も、イやウなどの狭母音も勿論のことである。

それから、大切なことはドイツ語は日本語ではない、ということ。
どうしても最初はカタカナ読みになってしまうので、日本語の発音がそのまま発声に反映されてしまうだろう。
日本語とまったく違う言語を扱っている、とかなり意識して欲しい。
もちろんカタカナ読みで良いのだが、発音に気をつけて欲しい。

それは、音符を扱う時にも関係がある。
例えばMitという発音。実際歌う場合はミットと意識すると、促音の部分を意識するから音符が短く歌われる。
増してここに8分音符がつくと、もっと短くなってしまうし、前後の言葉とのつながりも切れる傾向になる。

ところが、声楽と言うのは、なるべく母音を繋げるように歌うことで、マイクがないことによる不利を補わなければならない。
Mitなどのような発音は促音と意識しないで、Tを発音する強さだけで意識して欲しい。その分、イという母音を可能な限り
響かさなければならない。
端的に言えば、短い音符、或いは短い母音をなるべく大切に歌う、と思ってもらうだけでも良いのである。

日本語版スザンナのアリア
こちらは有名なアリアで日本語だけど、日本語の問題は逆にあまり気にならなかった。
強いて言えば、文脈の抑揚を良く生かして語り歌うことで、聞いている人がより良く意味を分かるようになるだろう。
最後の高音は、当る前に良く喉を開いて、しっかり出して欲しい。

精進落としにMy true love
こちらは特に言うこともないが、高音が自然に力まないようになっていた。
全体に音域が低いので、発音で力まずに中低音の響きを高く明るく響かせることを注意したら良いだろう。

たかはしさん

発声練習は本当に声慣らし程度、またあまり高音をやらなかった。
中低音域は非常に良い感じで出せていて、健康的な体調を表している。

曲はHandelの Piangero la sorete miaから。
何か最初は口を脱力しているのか、もがもがと何を歌っているのか良く分からなかった。
脱力を意識していたのだろうが、下あごを脱力するあまり、全部脱力してしまうと、発音が明快にならないし
響きも低いものになりがちである。
上唇を良く使って欲しい。あるいは頬などの顔面上部の筋肉である。あるいは舌であろうか。

Hark! how all things
前回よりも進歩があった。こういう進歩がレッスンの度に感じられると、こちらも教え甲斐がある。
付点音符の跳ね方が上手くなった。
テンポをもう一回見直してAllegroを意識すれば、長大なメリスマのフレーズもかなり続くようである。
フレーズの頂点でブレスは入れない方が良いだろう、せっかくの技巧的なイメージが途切れてしまうから。

I attempt love’s sicknessは、前回注意したことがすべて前進していた、これもブラヴォー!
同じことを更に推し進めて欲しい。
とても古典的な音楽スタイルに注目、最初のモチーフ5小節と、次の7小節はABとという違い。
どう違うかと言うと、Aが小刻みであるなら、Bは滑らかである。
そういう違いを見つけて、殊更に強調してみることだ。
そういうフレージングの形の違いを見つけて、それを自分で感じて歌うだけで、音楽はとても立体的になるものだし
歌っていて、疲れない。

Farest Isleも方向性が定まった。こちらも同じく更にこの方向性を具体的にはっきりと指し示して演奏すれば良いと思う。
後は速く暗譜をして、暗譜で歌う集中力を養って欲しい。そのことで、上がらない落ち着いた演奏が期待できると思う。

みねむらさん

発声あるいはレッスンのテーマは毎回同じである。
もう愚直なまでに同じことを徹底してやって、後は身に付けてもらうのを忍耐強く待つばかり。

声楽と言うのは本当に難しいな、と自分のかつてのことを忘れて教えていて思う。
難しい、というのは理解と行為の間の距離感である。

自分だって未だに不完全だけど、かつて先生に口を酸っぱくして言われても、それが良いのか悪いのか自分で判断できなかった。
だから、そこから逃げてしまって、いつの間にか楽なことをしていたのが自分の失敗である。
これはもう理屈ぬきで甘んじて受け入れるのが一番の方法論であり、もう理屈抜きである。

良いといわれた時の身体的な感覚を覚えておくこと、そしてそれを再現すること。
単純にそれだけである。

2点C前後の音域で、きちっと喉を保持、あるいは声帯を閉じる、ということがないと、響きが出ない、あるいはスカスカする
あるいは喉の上がった声になってしまう。
喉を保持するためには、顎や喉そのものでやるのではなく、姿勢で決めること。
顎をきちんと引いた姿勢である。

一見して喉が楽な状態が必ずしも良いわけではなく、一見不自由でも喉の状態が良いのは声で判断して欲しい。
良いときは喉が上がらないで、響きが上に抜けて、だけど響いている声である。
顎が出て、下顎で歌ってしまうと一見響くけども、後で喉に負担になるのが分かるはずである。

というわけで、プーランクの「カルメル派修道会の対話」神父のアリアから始めた。
フォルテを意識し過ぎなくても良いのだが、やはり声のアタックで1オクターブ下を歌うくらいに意識すると、自然に喉が上がらないと思う。喉が上がらなければ、後はポンと当ててそのまま歌い続ければ良い。
Pあるいはメッザヴォーチェの表現になっても、絶対に喉を上げないように。
その分、上を良く上げること。上顎の中を良く高く広く感じてアーティキュレションすることでる。
それは、最後のAmenの響きでもっとも大切なことである。

プーランクC’est ainsi que tu esでも、2点C以降の音域は同じだが、この曲では更に低い声をきちっと響かせて欲しい。
単純に発音をもっと「えぐく」良く言えばはっきりと。
これも愚直なまでに彼女には実行してもらいたいこと。
口、あるいは唇、あるいは顔面の筋肉の使い方がまだまだ足りないのである。

マスネーのSonnet 喉も温まるせいか、曲がお気に入りのせいか、これが一番良い出来となる。
こちらも発声の根本的な問題は同じとして、後は発音をはっきりはっきりさせることかな。