たかせさん

発声練習では、彼女の2点F前後の不安定なチェンジをまとめることをした。
この領域に限っては、声が当たる前に喉を良く開けておくことが大切。
ということは、下から徐々に上がるスケールパターンのフレーズでは早めの処理を。
2点C以降では準備しておくこと。
いきなり、がつんと高音の場合は当る直前に良く下あごを降ろして、軟口蓋も上げてという口の奥を開くことを
素早く処理することに慣れること。

コンコーネは18番、19番を練習。特に18番を入念に。
今日やった発声のことを中心にした。20番は譜読み程度に。
いずれも8分音符系のリズムなので、長い音符の数を間違えないように、譜読みではきちんと数えて確認を。
きっちり出来てから、大きくリズムを取って流れを大切に。8分の9だったら、3×3だから3拍子で出来るだろう。

Se tu m’amiはブレスポイントを譜面どおりに守って欲しい。
イタリア語の読み、訂正したところを確認して欲しい。

Quella fiamma,Intorno al’idol mioなど、これからやってみることにした。
好きな曲が選べる好みがあるのは良いことだ。
いろいろな曲を聴いて、歌ってみたいと思う曲を持って欲しい。
モチヴェーションに勝る上達法はないと思う。

趣味がはっきりしているし、素直に、真摯にこちらに向ってくれるのでとても教え易い。
今は細かいことより、とにかく身体を使って喉を開けて精一杯声を出すこと。それに尽きる。

はなむらさん

発声は低い領域からイで上向形の発声は良い声が出る。
高音も自然にチェンジできて好印象。
気をつけて欲しいのはチェンジするとお腹が外れて重心が高くなること。

高音は中低音よりもむしろ深くブレスして、深いところから出す意識を大切に。
その分、発声感覚は重くなるが、それが丁度良いことを覚えて欲しい。
喉を良く開けて、息は高く送ること。

サンサーンスのアヴェマリア。
全体にやや音域が低いが、中低音の響きの確立と、ラテン語の発音で外国語発声の基本を覚えて欲しい。
こんなところから、カタカナ読みではない母音の響きを少しでも覚えてもらえれば、価値があることだろう。

最後にヘンデルのジュリアス・シーザーVadoro pupileを練習。
これも基本は発声を大切にしたい。
イメージがあると思うが、録音などのイメージに忠実な余り、口先で声質だけを追わないように気をつけて欲しい。
彼女の今の声にはやや重い音楽だが、それで丁度良いとも言えるだろう。

まずはともかくしっかり歌って欲しい。
気持ちよさも大切だが、身体をしっかり使って力強く訴えること、声もそうなるだろう。
音楽の気分に流されずに、訴求力を大切に。
音楽的にはそれほど難しい譜面ではないので、その辺りを発声も絡めて勉強して行きたい。

たかはしともこさん

本番では、ブレスが浅くやや声のしっかり感が欠けてしまった。
そのため、高音も浅くなって声量が出せなくなってしまった。
元々が軽い声なので、響かない所に行くと頼りなくて逆に声を押さないようにしてしまったのだろうか。

理想は小屋の響きに左右されないで発声できること。
自分の声の核をいつでもどこでも発揮出来ることだ。
声を押すとか押さないとかは、その場合全然関係なくなる。
すなわち、響く小屋でも抜かないで芯のある声が出せるし、響かないところで、声の裸の部分でも勝負できるだろう。
要するに、自分の声の芯はどういう状態か?ということを早く覚えて欲しいのである。
その芯の出し方において、出し過ぎか、あるいは適度な出し方か?という感覚が問題になってくると思う。

今日はドニゼッティのAh rammenta,o bella Ireneを練習。
彼女はこの手の曲が合っているようで、声をビンビン出して快調に飛ばしていた。
そういっては失礼だが小技を効かせる、というよりもこの手のイタリアもので、ビンビン出していくものをやる方が良いのだろう。
また、声は基本的にこういう気持ちよくどんどん出すことが基本だから、今後もこういう曲で、声の芯をしっかり掴んで
それだけは、どんな本番でも出来るようになることが、一番の解決ではないかな。

最後にヨハン・シュトラウスのワルツを3ページほど練習。
音域の広さよりも、リズムが難しそう。
自分でリズム分析をしないと、ただ歌うだけで練習してもなかなか難しいようである。
特にタイで繋がってシンコペーションになるリズムは、一度タイを外して、シンコペにしないで練習してみること。
そのように、自分で細かくリズム構造を噛み砕いて、頭でも理解して譜読みをしないとなかなか進まない。
徹底した細かい練習を望みたい。

みねむらさん

彼女は思っていた以上に呼気が弱い。
呼気を素早くしっかりと吐く面が弱い、というかなかなか出てこないのである。
このためには、力んでしまってその悪い面があったとしても、吸気すなわちブレスを相当意識した方が良さそうである。

そしてそれも胸ではなく腹。
難しく考えず、どこをへこますとか膨らますとか考えずに、とにかく低い場所にブレスを入れることを大切に。
そして先ずはフレーズの頭でしっかり出してやることからもう一度始めよう。

そしていつも言うように、声を出そうとした時に顔が前に出ないように。
その逆で後ろに引くくらいが良い。喉がしっかり繋ぎとめられて、中で開いて
顔が前に出るから、喉が上がって喉声になってしまうか、ひっくり返ってスカスカになるかしてしまうだろう。

曲はショーソンのLe charme,から
ショーソンは低音をしっかり出そう。喉も良く開け、軟口蓋も良く上げて、中を良く開いた状態でお腹に力を入れてしっかり出してほしい。出ない音域は地声でも、ちゃんと喉を開いて出せれば良い。喉だけにならないように。

ベッリーニは、音域的には丁度良い。
これも自分のイメージよりもずっと強く、しっかりと発声すること。
ただ、それだけである。
中音域が喉から上だけの声になるので、お腹を意識して胸から出すように。
口を縦に開けることで、喉が下がりお腹の横隔膜と声の関係が自然に繋がる声になる。

Adriana lecouvreurからIo sonol’umile ancella
こちらも胸を意識して、しっかりした響きをいつも忘れないように。
高音は喉が上がらないように良く開いて、軟口蓋もしっかり上げて、天を突き抜けるように!
そうしないと音程が下がって、抜けの悪い高音になってしまう。

腹は出すとか引っ込めるとか考えずに、しっかり腹に力を込めて発声してみて欲しい。
ブレスはそのために、低く深く入れると考えること。
そのことだけを、まずは身に付けてみよう。

つげさん

曲はパーセルのHark how all of things,I attempt love’s sickness,Fairy isle
いずれも、何不自由なく綺麗に歌えるのである。
楽しみで、ぽつぽつと好きな歌を歌っていくには、パーセルの歌曲や劇音楽の歌は、彼女には丁度良い。
音域も無理がないし、声量もそれほど必要ないだろう。

ただ、彼女自身が言っている中低音を分厚くするのは相当、いろいろな練習を経る必要があるだろう。
地声からチェンジして行く練習も、結果的に地声を使わなくても、チェンジした領域での響きを増すためには
有用だと考える。
ただし、これは時間が相当かかるだろうし、本人のモチヴェーションや自己練習も必要だ。
はっきり言ってレッスンだけでどうにかなるものではない。

結局、声のチェンジとか声帯の響かせ方も、広義では必要な練習だが、最後の最後にやった、姿勢を正すことが一番良い効果があることになった。

彼女は顔を前に出して歌う癖がある。
恐らくその方が喉が鳴るポイントという感覚があるのだろう。
確かに声帯は合っているが、締まった喉の状態なので、それが彼女の場合は何か子供っぽい小さな、細い響きにつながるのだろう。

顎を出さずに、むしろ顎を後ろに引いて、ただ顔を下に下げないで。
要するに顔全体がもう少し首の後ろにずれて立てるような姿勢。
うなじを後ろの壁につけるくらい意識してみて欲しい。

その状態で落ち着いてパーセルのFairy isleを歌ってもらうと、これが微妙にだが、喉が開いた、中に響いたふくよかな響きが
出せたのである。これは今更ながら、発見であった。
何事も基本が大切であることを、教えていながら発見させてもらえた。

今後もこの姿勢を大切に地道にやって行けば良さそうである。