ほんと、はやしださん声が良くなってきた。
まだ喉で歌っている感じもあるのだが、それが出せば出すほど良くなって艶が出てくる感じ。
前から喉は強いな、と思ったが、彼は喉が強いと思う。
声のポジションはバリトンにしてはまだ高めだけど、バリトンとして問題があるわけでもない。

何よりアリアを歌えるテノールはちょっとやそっとでは行かないから、消極的な意味でも彼にとってバリトンをやることは良い選択だと思う。
本質的にはテノールのキャラなんだと思うが、本当のテノールをやるのは出来たとしても相当時間がかかるだろう。
万が一にも高音に光明が見えたら、トスティ辺りから入ってみても良いかもしれないが、今は無理はしたくない。

ともあれ、良く磨いてなめした革靴の良い光具合が声に現れてきていて実に慶賀すべき。

ピアノもシューベルトの冬の旅、「あふるる涙」は悲しく鈍い北欧の光のイメージが良く出ている。その背景の中で、振り絞る涙の唄が良く歌えているではないか！
年齢的にも味わい深い歌が歌えるようになって、良い選曲である。
何も言うべきことがない。

郵便馬車は、ピアノは響きをやや抑え過ぎと思ったので、ソフトは取って貰った。
声が良く出ているのでまったく問題ないし、その方が明るい単純な音楽で良いと思う。
出だしだけは、タイミングをくれぐれも練習してシミュレーションしておいて欲しい。自信がなくなると、途端に腹の外れた声になるので、おかしいので。
後は言うことがない。

椿姫ジェルモンのアリアは、こえも喉さえ温まっていれば、高音もしっかりした声が出る。問題は喉が温まっているかどうか？だけだろう。
この曲も出だしのタイミングがワンテンポ遅れ勝ちなので、要注意。
ただ、この曲は後れてもピアノが普通に対応できるので、あまりプレッシャーに感じることはないのだが。有名なアリアなので、聞く人が聞けば判るだろう。
間違いはなるべく早いうちに直しておいた方が良いから。
ピアノも見違えるほど前奏の響きが綺麗になり、オケの音色を聞くようであった。

ともかく良い声になったのが、何よりである。
あまり細かいことうるさいことを言わずに、とにかくしっかり声を出してどんどんと歌ってもらったのが、今の声に繋がったのだと思う。
教え方が間違ってなかったな、とこちらも嬉しい。
本番は、伸び伸びと楽しく歌って欲しい。
成功を祈る！