始めたばかりということもあるが、このところ来るたびに何がしかの発見をしてくれるのが嬉しい。

発声を見ていると予想以上に喉を突っ張らせて高音に昇る傾向があるようだ。
低い音域から上向きのフレーズの場合、2点C辺りから喉を押すと音程が♭になるし響きにならない。
今日はこの点を注意して練習をした。

最初はドミソのパターンで練習。
ミからソに上がる際に、喉で押さないでほんのわずか軟口蓋を意識して鼻腔に響きを入れるように。
あるいは響きと共に息を抜かすような感じといえば良いか。
力まないで響きを鼻腔、あるいは頭部に滑らかに入れるイメージで、丁寧に、柔らかく発声を心がけてほしい。

この練習の基本としてハミングを練習した。
ハミングでピッチをきちんと決めるためには、嫌でも上記のことを気をつけないと出来ないはずである。
ハミングで練習をしてから母音に変換して行うことがもっとも近道である。

こうやって響く声は特に2点C以上の場合、チェンジの傾向が必然的に強くなるので、声量は出ない。
いわゆる頭声だが、頭声を最初に覚えておかないと、ピッチの良い、コントローラブルな高音が
後々出しにくくなるから、今のうちにしっかり覚えて欲しい所。

声量、声の芯は、それがある程度確立したらまた練習に入りたい。

コンコーネは21番から。譜読みはしっかり出来ているし声のことを考えて歌えている。
22番を譜読みした。これは次回再度声のことをやりたい。

曲はQuella fiammaから。高声用で歌ったが、前回厳しかった最高音域のフレーズが軽いけど綺麗に処理できて安心出来るようになった。
後はリズム、3拍子感を余裕を持って楽しめるくらいに譜読みに慣れて欲しいこと。
それさえ出来れば発声の問題も解決するだろう。

Pur dicesti o bocca bellaは取り合えず通してみたけど、ソルフェージュは合格。
譜読みはきちんと出来る方だ。
中声用なので逆に中低音域の声のピッチに注意。声が低いと逆に喉を無意識に下げてしまい、響きがモガモガしてしまう。
むしろ喉を楽に、響きを高く意識した方が声が集まるし、結果的に音程も良くなる。

高音は力まないこと、その上で響きを常に作る意識を大切に持って欲しい。

つげさん

今日は発声はあまり変わったこともなく、練習。
姿勢は良くなって、声の響きも自然だと思う。
発声練習で、母音アだと2点Cくらいまでは充分に良く響く声が出せている。
後は実際の歌唱で歌詞の母音の扱いによる、締まった響き、特に母音イの高音の処理を気をつけて欲しいところだろうか。

このイが相変わらず注意をしないと、締めてしまい喉っぽくなっている。
特に2点Eを過ぎる辺りから。
この辺の響きには細心の注意を払って欲しい。

パーセルの歌曲から、Evening hymn
ブレスも持つし綺麗にそつなく歌えている。
ただ、全体に呼気が弱い感じ。歌詞の発音が邪魔をして喉が開けないのだろう。
また、やや音域が低いだろうか。

特に出だしのNowの響き。
Nを発音しようとすると、口を閉じてからNを言おうとするからである。
口の中を開けておいて、口先を開いて舌先を充分に伸ばして発音することである。
この辺りの子音の扱いがまだ日本語的になってしまうから、喉が締まって響きが出にくいのだと思う。

発声を細かくやらなかったが、あくびをもう少し意識して開いた喉、上がった軟口蓋という、口の中の大きな開きを
もっと身に付けたいところ。そうすればもっと呼気の力で共鳴のある響きが出せるはずだ。
そして歌詞の発音でも、もっと口の中を大きく広く使うようにすること。
口先が閉じ気味である。もう少し単純に口を大きく開けるほうが、彼女の場合は良いかもしれない。

後はMusic for a whileを譜読み。
印刷された楽譜は間違いが多いので直し。

英語の発音は、常に気を付けて。子音処理もカタカナにならないように。
そのことが発声に大きく影響するからである。

あめくさん

彼女も相変わらず舌根が硬くなるのと、そのせいもあって舌が奥にまるまって引っ込む傾向。
そのため、どうもころころと丸まった奥に引っ込んだ声質になる。
この傾向は以前からだが、そろそろ脱したいところ。

くらのさんもやってみて効果のあった、下顎の下、喉頭の上あたりの舌根で硬くなっているところを触って発声してもらった。
そうすると力みが意識できるので効果的である。
声の力はお腹を使うが、この舌根でそれを支えないで発声することで喉頭周辺が自由になって、自然な声帯の明るい響きが出てくる。
これは共鳴とかそういう話以前の、とても根本的なところの話だから大切にして欲しいところ。

更に高音に上がるのでも、舌根に力を入れて喉を下げにかかるが、むしろ上がるままに任せるくらい、喉を脱力する感覚も覚えて欲しい。
ただ、声を出す、出し始める力は、お腹からであることを常に忘れないように。
ついでにだけど、姿勢も大切だ。
顎が前に出ないように。

曲はフォーレの「イスパーンのバラ」から。
フランス語読みはほぼ問題はない。
今日は声のことが中心に。
中声用なので、ますます声のピッチと響きが問題になる。
この曲では、

最後に「月の光」を譜読み。
こちらも中声用にした。
譜読み的には、中間部の伴奏形がアルペジョに変わる3拍子部分が、拍節感がすっ飛んでしまうみたい。
彼女にしては珍しい。
3拍子の中の2拍分使うくらい、大きなブレスを感じてみて欲しい。

譜読みはほぼ出来たから、後は言葉の意味と内容、そして自分のイメージつくりを大切に。
意味を分からないまま歌ってはいけない。自分なりの理解、咀嚼すること、を必ず持って欲しい。
結果的に詩の意味に対して曲が持つ形が符合する意味、納得を持てればイメージの完成になると思う。

みねむらさん

ちょっと風邪気味だったが、前回と同じく良い声のポジションを維持してきている。
低音域の音程感、声質も良い。
中音域の2点C前後の処理も大分上手く意識して出来るようになってきた。
特にショーソンのLe charmeはその辺りの処理が非常に良い。
この曲は現時点ではほぼ良い状態で歌えていると思う。

フォーレのリディアを持ってきた。中声用。
中音域でまだ♭になる傾向がある。
特に出だしのLydiaの最後の伸ばすAの音程。そして次のフレーズSur tes roses jouesのRoseの音程。
そしてこの続きにある最高音、Et sur ton col frais et si blancのblancで伸ばす音。
下顎で逃げないこと。上がる際に上がる音程の前から準備が出来ていないといけない。
これは、音域上の問題として、1点A~2点Cくらいの間で注意!

Adriana lecouvreurのアリア
今日は高音の徹底練習。それにしても彼女は喉が強いな。
その割には、喉が上がってしまうので高音が今ひとつ力足らずになる。
顎が上がらないように首でしっかり支えること。
上げてしまうと本当の意味で喉も開かないし、上も開かない。

最後にベッリーニのMa rendi pur contento
転調するまでのくだりは、素晴らしく良くなった。
後は、後半の微細な響きは丁寧に、大切に扱って欲しい。
最後の高音も、それほど高くないだろう。
顎を上げないで、しっかり前に響かせて欲しい。

みねむらさんの場合、舌根で声を支える悪癖はあまり感じられない。
その代わり恐らくお腹を使って呼気を送る意識が足りないのではないだろうか?
自然なビブラートが出てこないことや、クレッシェンド~ディミニュエンドが出てこないのもそういう点が関係するだろう。
今後の課題にしたい。