T瀬さん
発声練習を低音から始めた。
今はあまり高音を無理せずに、良い中低音を出せるようにしてあげたい。
しかし、以前に比べて喉で強く鳴らしていた中低音が随分とマイルドになった。
その分中高音域、2点C前後の音程が良くなっている。
まだ癖が残っているのは、口を開けないでチェンジに対処すること。
口を開けないほうが出やすい意識があるが、それは声が当たりやすいからであるが
良く喉を開けて高音に入れば、当った響きと、スカスカした頭声の響きが混ざって
上手くミックスするから、良いのである。
ミックスさせないから、下の声と段差が付き易かったり、あるいはひっくり返る傾向が出る。
また口を開けないと、喉先だけで調節するために響きが小さい。
伸びやかに息を伸ばすように歌うのが声楽の醍醐味だから、喉を開く必要がある。
この点は、口が酸っぱくなるくらい言わないと、なかなか分かってもらえないが、どうか分かってもらいたい。
今日は姿勢を注意。
顎が出ない姿勢、首が真っ直ぐに立った姿勢だ。
壁に腰、背中、首の後ろを付けるように立って発声してみた。
そうすると、喉は一見不自由だけど、口から声を直接出すのではなく、後頭部から脳天にかけて響きが昇って出る感じがするだろう。
身体を楽器にする実感を、姿勢でつかめると思うので、今後は充分練習して行きたい。
コンコーネ20番をじっくり練習。
良く譜読みが出来ていた。音符が伸びて繋がるタイのところは気をつけて。
21番は 軽く譜読み。
譜読みの時から発声のことも同時に考えて欲しい。
歌はQuella fiamma che m’accende
こちらは3拍子の曲なのだが、音符を伸ばす箇所で、所々3拍子を忘れてしまうので
短くなってしまう所を注意。
譜読みが進んできたが、後一歩の感。
譜読みがきっちり出来たら、声のことを中心に練習したい。
T橋さん
声の出だしはリラックスして、ど~んと横隔膜を下ろして。
上に行くほど呼気の勢いを増して声の指向性をもつように。
イで発声を始めるのは声に芯を付ける感覚を養うことにある。
その方が声がチェンジしても、自然に芯が付いた高音にチェンジできるからである。
芯がついたといえば良いが、要するに良い意味で喉を使っているのである。
そういう意味で考えれば、彼女の場合特にロングトーンなどで声が揺れるのは、喉から離れようという無意識が強いのではないだろうか。
声をアタックしてから、伸ばす際にすでに無意識に抜いている面がないだろうか?
この辺りは、抵抗があるが、あまり喉を労わり過ぎないで使う面も考えてみて欲しい。
高音はそれでも口を横開きにしないで、対処出来るようになってきた。
少しずつしっかりした響きを上に伸ばして行きたい。2点bまでなんとかなりそうである。
曲はドニゼッティのAh!rammenta,o bella Ireneから。
大分形が付いてきたが、やはり出だしの1ページがテンポ感が今一つ良く分からない。それは細かい音符の処理のせいだろう。テンポ全体をゆっくりにして、3拍なら3拍、6拍なら6拍をきちっと表現したい。
特に32部音符の集積を拍内で綺麗に音程良く処理できること、16分音符の6連符も同じ。
新しい曲はドニゼッティの歌曲La corrispondenza amorosa
珍しくフランス語歌詞が付いているので、フランス語でさらってみた。
フランス語の前に、やはりリズムを正確に読み取りたい。
特に難しいのではないが、この時代のイタリア的な旋律のスタイルをきっちり出すために、旋律の変わり目の繋ぎの部分とか、節の変わり目から新しい節に移ってからの変化をきっちりと綺麗に表現したい所。
最後にいつものようにシュトラウスの「春のワルツ」後もう少し、まで譜読み。
次回には終えたい。譜読みを終えないと、声のことに移れないから。
特に今日の最後にやったところから、最終コーダにかけて高音の非常にテクニカルな場所なので、充分注意したい所。何しろリズムである。
A久さん
フランス語、あるいはフランス声楽作品をある程度、ものにしたいので今日からフランス語も勉強することにした。
ということで、彼女の質問がたくさんあった。
質問がある、ということは疑問があるということで、疑問があるということは
興味がある、あるいはなくても知識欲があるということで、扱う作品の言葉に興味が持てないのに、歌えるはずがないじゃないか、という視点を大切にして欲しかったから、とても良いことだ。
フランス語の辞書を自分で引いて、最初にぶつかる壁は発音記号。
発音記号の読み方が分かると、問題は動詞だ。
フランス語の動詞は人称がついて変化するから、歌詞にある変化形だけをそのまま引いても辞書によっては、さっぱり分からないことになりかねない。
出来れば辞書も付録に動詞の変化表が載っていれば、基本のEtre,Aller,Avoirでほとんどの動詞の変化が分かる。
また、動詞の変化表が付いていれば、多分変化形で動詞を引いても、そこに動詞変化形の何番、という指定が書いてあるので分かりやすいと思う。
そんなこんなで、ほとんどをフランス語の読みや動詞の変化などについての講義、質疑応答になった。
発声は低音から上向形でイから初めて、次にアにして練習。
2点Cから上の喉を開いて行く感覚はとても良く出来てきている。
低音域は、結果的に下の声区はほとんど使わないで対処している。
また、それで通用する声になってきている。
更に声が集まるように、努力は続けて欲しい。
曲はフォーレの「イスパーンのバラ」
一応通したが、きちんと歌を見れるのは次回になるだろう。
譜読みは早いと思うので、言葉をリズムで読む練習だけはしてほしいことと、
フランス語の訳も含めて、理解を深めて欲しい。
勿論、疑問点があればまた質問して欲しい。
また、「月の光」も次回、出来ればやりたい。
M村さん
発声を始めた声が、目を見張るくらいしっかりと響く声になっていた。
喉がど~んと落ちて、良く伸展した声帯をしっかり合わせて声を出している、という声が低音からしっかり出てきた。それでも彼女の低音は地声にはならない。
そのまま2点C以上のチェンジ領域は、喉は締めないように気をつけて欲しい。
ただ喉が上がらないようにして、息に指向性を持たせて行くこと。
上顎から鼻腔にかけて響きを前に出していくように。
下の声区のまま上に持ち上げていくようにすることで、喉は上がらないで出来る。
声区が変わり易い人は、変えない様に意識することも必要である。
ただし喉が締まり易いから、喉を開いて行く、あるいは音程が上がらなくなる分を
軟口蓋を良く上げていくようにする、ということを口の開け方と姿勢を気をつけることで対処していくことである。
というようなことは、今までもやってきたが、とにかく今日の良い結果を維持して欲しい。
ショーソンのLe charmeも素晴らしく良い低音が聞こえている。中音域も音程が良い。
正に良い結果である。彼女の歌声が初めて輝きを放っている。
歌声というのは不思議である。
このショーソンの曲という素材を得て、彼女の声が活き活きとするのである。
彼女の行くべき方向が分かるような気がする。
まだ決まらないが少なくともこの曲の音楽は彼女の今の声を生かしてくれている。
この曲は全体に低めだし、上の声区をほとんど意識しないでも対処出来るだろう。
音程は、高めの範囲で軟口蓋を良く引き上げること。ただし胸声の響きは変えないことである。
ベッリーニのMa rendi pur contentoは、前半の部分はとても良くなった。
短調に転調してからの音程に注意。
特に中高音域、チェンジしてからの音域のエである。
またチェンジ領域に入ってからの母音の扱いだが、狭母音が開きすぎて浅くなることに注意。
ウなどはもっともっと口を突き出して、深く発音することである。
アドリアーナのアリアは、下の声をしっかり持っておいて、高音はひたすらその声を上に持ち上げるための
腹筋であり、また軟口蓋の引き上げをしっかりすることだろう。
またレガートに高音を処理するために、声を前に出すだけではなく、むしろ中に入れるようにアーティキュレーションすることも
覚えて行きたい。
口先を前に尖らさないで、むしろ中に入れるように、声を包み込むようにして、響きを頭部に持っていく、あるいは中で共鳴させるような意識、出し方である。
最後の高音はMという子音で音程を決めておいて、思い切って発音すると上が開いて、音程の良い抜けの良い高音になる。