IWASAKIさん
ドビュッシーのApparitionを持ってきた。
私自身が勉強していないし、お弟子さん時代も他の人が歌ったのを聴いたことが無い。
ムジカCでも歌った生徒はいなかった。
でどうか?というと、見事に良く勉強してこられた。
私も適当な伴奏を弾くだけで懸命であったが、見事にフレージングしてドビュッシーの音楽になっていた。
ここに来た頃は不安定で出し難そうだった高音を、ものの見事に彼女に相応しい姿に仕立て上げたな、という印象。
まだ、不安定要素はあるが、とにもかくにもこの幅広い音域を綺麗に処理出来ている。
後は伴奏合わせで細かいことを言えるだろう。
Nuit d’etoile
中高音、高音、ともにまったくといって良いほど問題がない。
彼女の高音はどちらかというと、開いていて冷たい響きの傾向だが、それがドビュッシーの現代的でクリアな音楽にとても合っている。
イメージがドビュッシーの望むとおり、という感じである。
Green
こちらもピアノ伴奏で精一杯。笑
J’arrive tout couvert encore de rosee,
Que le vent du matin vietn glacer a mon front近辺の音程の良さに瞠目。
出だしのモチーフは、元気良くぐいぐいと語っておいて、再現部は少し疲れ気味、眠たげにすると良いだろう。
最後のピアノ伴奏の上昇音型と、Et que je dorme un peu puisque vous reposezとのアンサンブルにうっとりである。
この曲では、2連符の扱いに注意を。
Aimon nous et dormons
中低音の響きと音程が抜群に良い。特に出だしのモチーフの響きの質と音程の良さは特筆に値する。
この中低音と、女性的な高音との対比が、まったく彼女の歌曲歌いとしての資質を象徴しているかのよう。
彼女の歌ならドビュッシーは皆さんに聞いてもらいたいと思わせる、センスと声を持っていると思う。
人それぞれ好みだと思うが、今日のレッスンの彼女の声と音楽的センスには絶賛!の言葉を送りたい。
HYASHIDAさん
今日はピアニストさんにもご登場願って、楽をさせてもらった。
ピアニストさんは面白い方だが、礼儀正しく、こちらも気持ちが良い。
フォーレのLe berceauxから
今までレッスンで聴いたことがない優しい声が出ていた。
ピアニストさんの音楽のおかげだろう。
ただ、この音楽からするとやや優しすぎる印象。
逆に言えばピアニストさん、もう少しビートを効かせることと、音量を上げてもらっても良いだろう。
次にやったPoem d’un jourのRencontreも、ピアノで音楽をかなりはっきり造ったほうが良いだろう。
彼の声がどうもしゃきっとしないので、リズムをまずフレーズ単位で早く歌うことをやって、次に、ビートを活かして練習。
音楽のダイナミックは、ピアニストさんに相当はっきり出してもらうことにした。
それだけで、音楽が明瞭になってくる。
彼の声の場合は、特に最後の高音の伸ばしは、ディミニュエンドしないほうが良いと思う。ディミニュエンドすると、声の支えがなくなり、なんだか情けない感じに聞こえてしまうからである。
日本歌曲は「あのここのこ」から、歌い手さんはピアニストより重く歌いたいようである。
いわゆる「えんやこら!」のリズム感を大切に。
これは、本当に良い声が出ているし、歌が表現されていて言うことは特にない。
「初恋」も良く歌えている。後半のメリスマは伴奏があまりないから、テンポよりももっと重く大きくした方が気分だろう。
伴奏は、特に出だしのテーマは海の波の寄せては返すエコーのような印象を良く効かせて、間合いを大切に。
最後にPalgiacciからPrologo
この曲はもうひたすら、全体を通すことだろう。
そして、区分による音楽の違いをはっきり把握して実現すること。
遅いテンポでゆったりなのか?語るところか?ぐいぐいと前に持っていくところか?ひたすら歌いこむところか?
それは、明快に書いてあるし、分かりやすい。
そうやって勢いが付くと、抜けた高音が良く出ている。
今日のレッスンでは、やはり彼の声はテノールだな、と思った。
本人はどちらでも良いのだろうし、歌曲であればそれほど拘ることもないが、アリアを歌うとなると、やや中途半端な印象を免れないのである。
低音は力んでしまうが、高音は温まるとかなり良く出るようである。
このアリアは太いバリトンが強い高音を出すところにドラマティックな妙味があるわけで、そうなるとテノールをやれば良いのに、と思ってしまうのである。