IAさん
今日は伴奏合わせ。初めてのピアニストさんだった。レッスンといっても、アンサンブルのことが中心になった。
ピアノはその人によってキャラクターがある。

全体に緊張していたのか、テンポが前のめりになり過ぎて、息を歌手が合わせる感じで、どうにかこうにか凌いだという状態であった。
その辺から整理整頓して行った。
Aimons nous et dormonsは、彼女が本来持っている温かみと洒脱な味わいの中低音の魅力がいかんなく発揮される曲である。
音楽全体に漂う、大らかさ、ほのかな明るさ、を大切に。そのために、テンポも急ぎすぎないでゆったり構えて弾いて欲しい。
だって音楽に平和でいとおしい雰囲気が書いてあるではないか!?

RomanceテンポはTres lentだから、非常にゆったりと、まったりとである。特に出だしは8分音符で数えて丁度良いくらいである。
テンポの妙で美しい溶けるような和音と声の美しさを《楽しんだ》演奏を実現して欲しい。
気持ちの良い時間をさっさと手放す理由はないではないか!?最高音は手前の短い音符を大切に。
ブレスは入れたほうが良ければ入れるべきだろう。
入れてもおかしくない所だと思う。また、顔が少しくにゃくにゃ動いてしまうことも、中高音で不安定になる要因になりかねないので、注意が必要だと思う。

逆に言えば、あまり情緒的にならないで冷静に声に集中しても良いだろう。
前回不安定だったGreenは、安心して聴ける声になっている。中低音と高音との対比がバランスが良くて美しい歌唱である。
こちらも今日のテーマはピアノとのアンサンブルである。テンポの変化、2連符の正確な扱いなどなど。
Apparitionもテンポが速すぎる。
あるいは、音色に対するデリケートな扱い、と言い換えても良いだろう。

出だし、オクターブで刻む16分音符は相当なデリケートさが必要だから、必然的にテンポが決まるはずなのだが。。。
そして、Anime peu a peu から動き出して、ダイナミックに中間部を駆け抜けて欲しい。
その後はテンポの戻しの指示はないが、音楽が緩んでいるのだから自然にゆったりと終わりに終息していくべきだろう。
くれぐれも美しい和音を大切に扱って、消え入るように余韻嫋嫋で終わって欲しいものである。

私個人が思う彼女の声の魅力は、熱と膨らみのある中低音と、対照的にクールでスリムな高音の響きである。
この対比があればこそ、ドビュッシーの歌曲の妙味が活き活きとしてくるのである。
後はアンサンブルを充分に練っておいて欲しい。まだ時間は充分ある。これだけの作品なので、相応の演奏を期待したい。