TKさん
今日は良い声の響きであった。
まるで湿度計のように、何か体調か天候かに左右されるかのように、毎回声の響きが違ってきている。
ただ、中低音の響きは徐々に分厚くなっているようである。
本人もそう感じているようだ。
地声発声の練習が功を奏しているのだろうか?
こちらも理屈だけなので、本当のことはなかなか分からない。
ただ、声のチェンジの問題は男性のファルセットと実声との融合と同じ問題であることは確かで、そこから推し量れば、両方の声の出し方をきっちり会得しなければ、両者の融合もないわけである。
If music be the food of loveから
響きの豊かさはこの曲に丁度良い。
非常に気持ちよく歌えている印象がある。
重い出だしもこなしているが、徐々に前に進むテンポ感をピアニストも持って、アンサンブルが大切になるだろう。
後は合わせ、アンサンブル次第というまでに出来上がってきた印象。
ピアノパートが実に良く出来ていて、バロックスタイルのクラブサン曲としても恥ずかしくないくらい秀逸な作品だと思う。
I attemt from love’s sickness
こちらは、アップテンポの曲で言葉が生き生きしていないと、面白みがない。
ただ、旋律を歌うだけの意識だと、歌詞がはっきりしないし、何のために歌っているのか?良く分からない。
勿論何の曲でもそうだが、歌詞の意味を良く調べて歌詞を歌う、という順番を考えてみよう。
旋律を歌うと、おまけで歌詞が付いているのではなく、詩があって、それに節をつけて歌う、という風にである。
Music for a whileは、これまた違った曲でメロディで歌えちゃう曲だと思う。
そういう意味で良く歌えている。
ただ、子音の取り扱い一つで声が、旋律の質が変わるから、やはり歌詞の取り扱いは丁寧に。
最後にフランス18世紀のロマンスから、Maman dites moiを。
譜読みが終わってこれから練習の状態。
後は練習量あるのみ、である。
SYさん
今日は前回よりは声の温まりが遅かった。
それくらい、前回は調子が良かった。
やはり、姿勢と、声を当てる場所や喉の開き具合など、かなり喉を意識してしっかりと響きを作る意識を持って欲しい。
10分ほど喉を温めてから早速、曲の練習に。
今日はプログラムも決まった「イブの歌」最後の曲10曲目から練習した。
O mort,poussiere d’etoile
譜読みはまったく問題ない。
後は慣れ。ひたすら歌いこみを増やすばかりである。
どちらかといえば、歌う人の進み具合、テンポ感が大切な点が難しさにつながりそうである。
そしてVeilles tu ma senteur du soleilは、テンポも声も素晴らしい。
声域が彼女に丁度良く、活き活きとした声の響きが心地よい。
ピアノとのアンサンブルが楽しみである。
もう一曲、2番 Comme elle chante dans ma voix
こちらは、良く練習できている。後は歌詞の歌いこみが進めば更に表現力は増すだろう。
いずれも後は練習量である。今回、心配なのは発表会までの暗譜と練習量、特に合わせである。
良い表現に到達するまでは、合わせを充分したいが、現実的になかなか思ったとおりに行かない。
その辺りを何とかしたい。
WHさん
彼女の現在の声に素直に従って、2点Dから下降形で上がり下がりして、中高音域の声をみた。
やはり頭声成分の強い声で、胸声区の響きはほんのわずか下についている、といった感じだ。
これなら、確かに軽いし力まないで出せるが、やはり上に行くほど細くなって、力感には欠けてしまうだろう。
高音の力強さに関してはもう少し胸声区の響きを付加して欲しい。
そのためには、もう少し声帯が合うような方法と、呼気の力とその方向である。
声帯を合わせることに関しては、口を開けすぎないポイントを探すこと。
そして呼気の力と方向に関しては、胸骨上のポイントに当てること、クレッシェンドで腹筋を良く使うことである。
この練習は一発で上手く行ったので、今日の練習で、彼女の懸案の高音が大分しっかりして表現にかなったものになったのは嬉しかった。
イタリア古典からIntorno all’idol mio
こちらは、テンポがようやく安定し、フレーズの安定感が増した。
フレーズの終わりを端折ってしまう癖も影を潜めたし、特にPPで長いフレーズを歌うポイントが上手くなってブラヴォー!であった。
彼女の中高音域の声が持つ微妙なビブラートがなかなか良い味を出している。
Dove sonoは、レシタティーヴォの語り口、表現力が素晴らしい。
良く勉強した、と褒めてあげたい。彼女は勉強家であるし、努力家だと思う。
惜しむらくは、最後の2点Aの声の表現力。最初はか細い声になってしまった。
ただ、前述の発声練習で、一応は解決できた。これを継続して欲しい。
アリアも、入りの部分が微妙な感じで上手く出来たのも拍手!
最後の最高音の2点Aもしっかりドラマティックに出せたのも成功だった。
しかし何より大切なことは、内容(ドラマ)を歌に現わそうとする意思と、そのための研究、練習である。
その意味では、この名曲を取り上げて恥じないだけの、練習をこなして歌えるようになった、と思う。
後は伴奏合わせだろう。期待したい。
ACさん
今日は中低音の響きが最高に良い声が出せた。
声が温まるということもその条件なのだろう。
最初はどうも寝起きみたいな声で、顔もなんだか眠そうだった。笑
しかし歌い進むにつれて声の調子はどんどん上がってきた。
最初のフォーレ「月の光」は、声のことはさておいて、リズム感をしっかり身に付けてもらった。
この曲は伴奏が歌とまったく違うところを向いているので、ついつい歌のテンポ感がなおざりになってしまうのである。
楽譜冒頭にMenuetと書いてあるように、その舞曲の3拍子の感覚を身体で感じよう。
舞曲である。
まず歌だけで練習。3拍子を大切に身体で感じて歌うこと。
それが出来てから伴奏をつけて、同様に歌ってみる。
何か幼稚っぽい練習のように感じるが、そんな当たり前の原初的なことが出来ないで、クラシックの名曲も○×もないだろう!
と、私は思うのであえてやってもらった。
レガートとか、何とかいうような高等なことはもっと後で良いことである。
一遍に色々なことは出来ないから。
ドビュッシーの「月の光」は、やはり低音がもう一つぴりっと来なかった。
だが、それよりも中間部の音程、高音域の声の締まりが気になったので、そちらを中心に練習。
Il n’ont pas l’air de ,,,の入りのイの母音は高いので、くれぐれも締めて出さないように。
「ひそやかに、」は、声も温まってきて良い感じになってきた。
出だしのCalmesが良い感じで出せてきたので、更に鼻母音の響きと発音を大切に、と歌って私が範を示した。
声の真似かもしれないが、突然、深みのある素晴らしい中低音が出だした。
les branchesの鼻母音をしっかり響かせること、Fontの狭いオの母音は口を良くすぼめて中で響かせること。
また、子音の取り扱いは、口先を閉じないで舌を良く柔軟に動かすことで、喉を開けたままで歌う、レガートな
声の扱いを目指して欲しい。
今日のレッスン最後で聞かせてくれた中低音は素晴らしいので、今度は何とかこれを掴んで物にしてもらいたいものである。