NYさん
今日は声がもう一つだった。
やはりしばらく歌っていないせいだろう。
高音は出さないと、直ぐに落ちてくる。
曲はフォーレのShylockのChansonから。
母音だけの練習をしたが、2点F辺りの母音イの発声が難しい。
弱くても駄目だし、力みすぎても上手く行かない。
今日の課題としては、中低音を弱く抑えすぎていたのがあるだろう。
腰のない声は、結局高音も上手く行かなくなる可能性がある。
「夢の後に」では、母音でも比較的無理がなく、綺麗に歌えた。
最後にヘンデルのアリア。
こちらは綺麗に歌えるのだが、高音1点Gのロングトーンが持たない。
やはり喉が上がってしまう。
喉の慣れ、程度の問題で、練習をまめに続けて行けばまた復活するだろう。
問題は、今後テノールでやって行くことと、どういうテノールを目指すか?ということ。
テノールでやっていくには、やはり彼自身が相当覚悟を決めて練習して声を見つけていかないと難しいだろう。
一つは、本質的にテノールの喉である、という訳ではないないこと。
だから、練習方法から、選曲、声の出し具合などに至るまで、綿密に練習と本番を持っていないと大変である。
今までの音楽経験や、性格もある。もっともっと声を緻密に練り上げる丁寧さ、繊細さ、心配り、で地道に続けないと
中途半端に終わってしまう。
これは勿体無いと思う。
根性だけで出来るようなものでは絶対無いのである。
ただ、そこを良く見極めて、地道に続けていく意志さえあれば、必ず声は手に入るだろう。
まだ20代の若さである。
それこそ、40が頂点と思えば、まだまだ幾らでも道は開けるだろう。
その辺りを良く考えて、今後のレッスン、勉強を続けて欲しいと願っている。
KRさん
今日も発表会プログラムを通してみた。
声は益々調子を上げている。
最高音域の声質、声量は、今は変えようとしない方が良いと思う。
下手にいじると全体にまで影響が出るリスクを負うだろう。
1曲目、モーツアルトのBatti battiは、中高音と低音の声区の違いが目立ったが、軽快で可愛いツェルリーナ像はとても素敵に描かれている。一通り歌って、最後に再度歌って、下の声区を変えないようにしたが、とても上手く処理出来るようになった。
本番に当って気をつけて欲しいのは、ホールで歌うことを意識したテンポ感を持つことではないだろうか?
レッスン室と響き方が違うし、お客さん側の聞こえ方と言うのがあると思う。
楽に歌ってしまうと、ある意味であっという間に終わって、印象が残らないという面もある。
重いほうが良いと言いたいのではなく、ホールの大きさを意識できれば良いかな。
声の大きさのことではないのだ。
2曲目のモーツアルトEt in carnatus estは、最初の低音の響きがいつもと違い、滑らかで綺麗に入れたのが収穫。
その後全篇に渡って、美しい声を披露してくれた。
高音3点Cが非常に美しい響き、この曲らしい幻想的な響きに決まった。
前半の声のピッチがいつもより高めだったのだが、やはり彼女も胸を意識しないで歌っていたらしい。
この出し方は恐らく声の温まり方と関係があるのではないかな?
3曲目のロッシーニの「婚約手形」もいつも通り、まったく問題なく軽やかに明るく、ちょっとおきゃんな雰囲気のある歌であった。
アリア最後のカデンツの高音のセンスは、確かに難しい。元々彼女の声質そのものというわけでもない気がする。
ただ、彼女が歌うと、このアリアが内包するエスプリが良く活きるのである。
必ずしも声において完璧が得られなくても、彼女が歌う意味は充分すぎるほどあるアリアなのである。
それでも、強いて声のことを言えば全体に、2曲目モーツアルトの発声の影響が残るかもしれない。
次回は曲順を変えてトライしてみたい。
ところで、レッスンが速く終わったので、ヴェルディのアリアを2曲仮面舞踏会と椿姫とやってみた。
本来の彼女の声と合うかどうか?よりも彼女のキャラクターがどう活きるのか?という部分にこそ、私の興味がある。
私は声の完成度も大切と思うが、それ以上に役柄そのものと歌手の個性の一致、あるいはステージプレイヤーとしての素質に興味がある。
そういう意味で、彼女が椿姫を歌うとこれがなかなか良いものを出せそうである。