TYさん

彼女も久しぶりだった。
夏休みのフランス横断旅行が楽しかったらしい。嬉々としていた。
声は元気一杯で、夏休みらしかった。

元気なのは良いが、やや喉で頑張りすぎるのが、このところの彼女の特徴。
ただ、元気に出すことは悪いことではない。
どうやったら、元気でも綺麗な声に出来るか?が課題だろうか。

特に出しやすい中音域、1点F~2点Eくらいまでの1オクターブくらい。
見ていると下顎で頑張っているようにも思える。
下あごをあまり使わない、ということはあまり口を開きすぎない発声を今度は考えてみよう。

今日はコンコーネの50番の13番から。
譜読みが初めての曲を譜読み練習となった。
それで、後は12番を飛ばして11番を復習した。

最後にディズニーのThe second star to the rightを歌った。
懐かしいディズニーサウンドで、彼女にはちょうどお誂えである。

彼女に歌ってもらいながら、いつしか頭の中は子供の頃に兄貴に渋谷にあった東急文化会館の映画館に「101匹ワンちゃん大行進」を見に連れて行ってもらったことを思い出した。そしてなんだかもの哀しくなった。

大きな声で張らないで、声の響きを顔の中央に集めるように、丁寧に歌えるようになると綺麗だな。
これからも、少しずつそんな方向で練習していきたい。

SYさん

今回の発表会のことについて、少し話をした。
ご親戚のおばあちゃんを病院に入れるために、短期間彼女の元に預かって、その体験が今回の彼女の発表会での集中力、力に繋がったようである。
実際は練習も不満足だったし、暗譜もどうか、と言うくらいだったが、
結果的に今までにないくらい、素晴らしい集中力で、ほぼ暗譜で歌えていた。

人間の力というのは、理屈どおり、予想通りには行かないもので、火事場の力持ちではないが、リスクがあるときほど、集中力や力が出るものである。

実際、彼女は、本番でステージに上がってから、前の出演者に負けないためには
開き直って、これが自分の持ち歌なんだ!と自信が沸いたそうである。

派手なカンツォーネの終わりに対して、臆することなく、自分は自分だ、、と強くなれた彼女には拍手喝さいを送りたい。
特に3曲目O mort poussiere d’etoileの凄さは驚きだった。
私がイメージしたとおりの歌いかたをしたのだから。
死の尊厳を志し高く歌い上げられた。

今日は軽く発声練習を母音を変えて4往復くらい。
下のbから上の2点Gくらいまでの音域。
声の温まりは良かった。
調子は良い。

曲は「イブの歌」1曲目「天国」から。
とにかく長大な曲なので、思い出して譜読みを再開、という感じ。
テンポの変化を過大に感じすぎずに確実に歌いとおすことに集中しよう。

後は3,4,6,8番を歌ったろうか?
もう一度譜読みのやり直しに徹した。

WHさん

いつものように母音をイにして上向5度スケールで。
そろそろ覚えて欲しいのが、2点Eを過ぎる辺りから、喉を開いて欲しいこと。
そのためには、歌いながら口を突き出すか、縦に開いて行くように口を開ける技術である。
今日は何も言わなかったが、その辺りの感覚に気づいているだろうか?
もうそろそろ分かって欲しいし、出来るようになって欲しい。

彼女は今回の本番もそうだったが、歌うとやや力みが前に出てしまう。
力むのではなく、喉をよく開くことを覚えると、それほど力まなくても高音が出しやすくなるだろう。
上に行くほど喉の深いところに入れていくように感じても良いだろう。

そのためには、上半身をもっとゆったりさせて、どん、と構えるように立つこと。
動くとかえって力むこともあるから、肩の力だけ抜いて、どっしり立って動かずに歌ってみよう。
そのことで、喉への集中力がかえって増すのではないかな?

曲はベッリーニのL’abbandonoから。
最初、どうもリズムや声が荒っぽいので、落ち着いて、ゆったり気味に練習したら良くなった。
特に出だしのSolitaria Zeffirettoのくだり。
オの母音で口を開け気味にすると、喉が開いてよい響きになるポイントを教えた。
そうやって、どの母音、シラブルでも必ず響きを出すように意識すること。
そうやって歌うためには、丁寧にユックリでも良いから良い響きの母音を必ず意識すること。

これで、とても良くなった。
要するに確実に丁寧に響きを大切に歌うことである。

それは、次のトスティも同じである。
non t’amo piu
喉を開けてもっとしっかり歌う手もあるが、彼女はとても女性的なキャラクターだから、逆に女性らしい細やかさ、
優しさを大切にした方が良いと思った。
今の彼女の柔らかい2点Cからの声を使って、丁寧にレガートに響きを大切にして欲しい。
テノールのように言葉で力んで歌わないことである。
レガートだから、良く中を開けて響きを綺麗に繋げるためには、少しゆったり目のテンポが良いだろう。
プッチーニ「ツバメ」も次回は聞かせて欲しい。

ACさん

彼女もこちらに来てまる5年になるだろうか。あれは確か8月くらいだった思う。

SYさんと同じく、淡々と確実に来てくれたのが長続きの秘訣だろう。
私も海のものとも山のものとも知れない素人さんを教えて、絶対の自信はなかったが、教えたことが確実に積み上げられた結果を見せてくれて、嬉しかった。

軽く発声練習をしたが、低音が響き難そうで、声が温まり切れなかった。
課題としては、低音域の声区の問題はクリアできたと思う。
後は、軟口蓋を上げて、いわゆる上の開いた響きを、低音でも綺麗に出せるようになること。

それから、高音も締めないように良く開いて出すこと。
そのことで声区の違いが低音と出来るが、高い声区から低音に降りたら、なおのこと鼻腔に響きを入れるように変える意識を大切にして欲しい。
喉側で力まないで軟口蓋を良く使うことを習い性にして欲しい。
ただし、喉も開けておかないと、締まってしまうから要注意!

今日は彼女の御所望で、グルックの「オルフェ」
最初低音が硬く、響きが微妙にフラットだった。
Ngaで軟口蓋を上げ、上を開く練習から良くなった。
上が開くからピッチが決まって、明るい低音になるし、これが出来ていると上の声区への繋がりが自然に良く繋がる。

Chanson triste,L’invitation au voyage,Phidyle,Soupirなど、私がさわりを弾きながら歌って聞かせたら、Phidyleが気に入ったようである。
楽しみにしている。