TS

発声練習は10分くらい。
ハミングも取り混ぜて、2点Gくらいまでにした。
イの響きからエそしてアに変える方法は、彼女の場合は特に中低音では必要だろう。

曲はパーセルのFairly isleから。
この曲はかなり綿密に練習した。
何を?というと、5線の中の声の響きである。特に2点C~Fの間。
喉で押さないで、口の開け方を工夫することで、喉の開き、口の奥の空間を意識して、声の響きの共鳴を出すことであった。
それは、色々な母音の形や、子音のきっかけが関係ある。

Lは、舌先をしっかり上に付ける意識であること、Kは、舌根が盛り上がって、上につくが、前方よりは、軟口蓋辺りに意識すること。
それらの子音をきっかけにした発音と、口の開け具合、喉奥の開き具合で響きがかなり出るポイントがわかったと思う。

最後にフランスバロックアリア集ソプラノ用からAux plaisir,aux delice,bergeresを。
こちらも母音の必要なところは、こちらが歌いながら響きを確認して、細かく練習した。
彼女の場合は、やはり口奥の開きを常に意識した発声が有効だ。
そのための子音の発音方、口の開け方など。
これからも、このくらいの優しい歌で、基礎をみっちり続けて行けば、音域云々以前の、綺麗な響きを出していけるようになるだろう。

NA

久しぶりであった。
発声練習の声を聴いていて、聴きなれたその声に懐かしさを感じた。

高音は以前よりアペルトで、直接的な響きの印象。
3点C以上になると、力みが抜けて、これはこれで良いと思えた。

ただ、2点bくらいまでがアペルトでやや力む印象。
響きが少し浅く、直接的な響き。
それから結果的に書くと、高音は確かに勢いは必要だが、これも声の勢いが強過ぎるから、コントロールし辛い状況。

と、もろもろ書いたが恐らくもっと喉が温まると、響きを出しやすい喉になるのだろうか。
あるいはもっとリラックスできる状況だともっと違ったのだろうか。
何か緊張気味にも感じられた。

いずれにしてもアペルトに過ぎる発声は、ウなどの狭母音を利用して練習してみて欲しい。
口先をあまり開けないことで、中を開く、あるいは共鳴のポイントを探すきっかけを掴みやすいだろう。
喉で当てた響きよりも、上顎から上で共鳴、あるいは響くような口の使い方、喉の開き、などを探すことである。

声の勢いについては、今日はやらなかったが、もっと小さな鼻声程度の小さなハミングで練習してから、少しずつ響きを出していくというようなやりかたをした方が良いかもしれない。
勢いを付けて出すと、いやでもアペルトにならざるを得ないからである。

母音発声のために、ある部分の力みが出てしまうかもしれないから、ここでもハミングは有効だろう。

曲は「ラクメ」から「どこへ行く?若いインドの女よ」
前述の発声で歌うのだが、感心なのはそれでもきっちり高音は歌いきれる喉である。
普通だったら、上がってしまって出なくなるものだが、彼女の強さはそれがほとんどない点だろう。
スタッカート部の声は、基本的に上手く対処出来ていた。
レガートで高音を歌うところ、それは特に2点bくらいにかけてのフレーズの声は、研究の余地あり。
前述の発声の指摘通りである。
それは強さ、というよりは軽やかさ、がこの曲の身上だと思うから。

プーランクのAir chanteを全曲練習した。
フランス語の読みは良く勉強してあった。
こちら中低音が主眼だが、良い声質で女性的な暖かさを感じるものであった。
最後に男女で歌う応唱のスタイルにより、Colloqueを歌った。
私が最初に男を歌って最後に女を彼女が歌う。
何を言うということまで至らず。
曲を歌いこんで、曲のコアに慣れる、イメージを持つことが先決だろう。

WH

彼女の声を聴いていると、声は持ち声の要素もあるが、それは即物的な意味ではなく、その人の人柄、みたいなものを強く感じる。
それは、彼女の場合は天真爛漫さといおうか朗らかさとでもいおうか。

このところの彼女の声の進歩は、たとえば、以前だったら喉だけ当てて出していた声(それでも美しい声だが)が、更に喉に開き
が出てきたことで、息と声の響きとの相互作用で共鳴的な響きが出るようになりつつあることだろう。

この傾向は良いから、後は2点F以上の高音で、口を直ぐに横開きにしないこと。
彼女の場合は、横開きにしてしまうために、響きがむしろ後ろに引いてしまう、あるいは散ってしまう感じ。
そのために、喉も浅くなるので、喉が上がってしまう。

口はむしろ縦に開けるようにして、鼻腔から目辺りにかけて響きを入れるようにする方が良いだろう。
喉の開きをそのままに、この鼻腔に入れるように高音を出すために、口を縦に開けるわけである。
高い音を入れるためには、上唇を更に上に上げるようにすると、自動的に軟口蓋が上がって上に入り易いだろう。
それは、下顎がきちんと降りている、という条件付だが。

今日はトスティのNon t’amo piuと、プッチーニの「つばめ」からドレッタのアリアた。
トスティは、基本のリズムはしっかり押さえておいてから、言葉の語り調子で歌うこと。
基本がしっかりしていないで、語りだけで歌おうとすると、リズムの基本がなくなるから、せっかちに聞こえてしまう感じ。

これは、発声の際にも指摘したが、ブレスも関係あるかもしれない。
胸で吸わないこと。喉が開いていれば、お腹の筋肉で自然に入る、というブレスが出来るようになると、リズムがしっかりしてくる。

ドレッタは、やはり高音の響きだろう。
かなり良い線行ってるのは、途中の2点Aから3点Cに行く所。
まだ響きが弱いが、これを出せるだけでも恩の字だ、とこちらは思ってしまう。

ただ、最後の2点bがブレスが疲れて腰砕けになる。
このフレーズのブレスを落ち着いてすることと、高音に入る前の2点DのSongnoのgnoをきちんとした響きにしておいて昇ること。
そうしないと、上に昇れないだろう。

TT

彼女は発声練習で声が温まっていない状況だと、2点F~Gくらいで、ちょっと喉がひっかかるような響きになるのが、少し心配である。
しかし、下降形で上がって行くと、思いのほか良い高音が出るようになっていた。
彼女の努力の跡が伺えて嬉しかった。
2点bがどうしても、芯がなかったのが、大分しっかりした響きになってきた。

ヴェルディLa forza del destinoからPaceを持ってきた。
お気に入りの1曲だそうだ。

結果的には、こちらの予想以上に高音の響きが良かった。
特に今日発声練習でも瞠目した、高音のしっかり感がこのアリアの高音にも良く活かされていた。
後は、ピアノ伴奏がきちんとしていれば多分解決することだ、と思うが、リズムを正確に把握した上で、アリア的な旋律処理を考えること。基本リズムがきちんと把握されないで、アリア的な歌い回しをしてしまうと、伴奏合わせが上手く行かないし、声にも影響が大きい。

また、声は弱すぎても駄目だけど、強すぎても駄目なところもある。
イメージがあると思うけど、自分の身の丈に合った声を大切にして欲しい。
特に5線の上の方で綺麗に歌う旋律などが、やや力みが強くて時として音程が上ずったり、力みが先走ってしまうように感じられる。
落ち着いて、冷静に声の響きを綺麗に聞かせる余裕をもっと持って欲しい。

最後にモーツアルトのRi pastoreを。
これは、前曲のPaceの勢いみたいなもの、悲劇性みたいなものを引きずってしまった。
もっと朗らかな、明るさをイメージして欲しい。

声の表現は、悲劇ばかりではない。
ある程度の幅が欲しいから、どのように声の中庸性を求めるのか?
という意識くらいは持っていたほうが良いだろう。
そういう意味でモーツアルトのアリアを勉強するのはとても良い、と思う。

MM

発声はあまりディテールに拘らず、声を温める程度に母音で始めた。
以前に比べると、2点Cからのチェンジでも、あまり喉が上がらなくなり、響きも違和感がなくなってきている。
力まないで、喉さえ安定させられれば、上手く行くようになってきたと思う。

フォーレのLes berceauxから。
これに限らずだが、喉を太くした少しばかり低い共鳴がつく癖があるのを直した。
喉は姿勢とか、呼吸の支えがしっかりあれば、上がらないし、このような中低音域の曲であれば、意識しないでむしろ高い響きを狙った方が綺麗に歌える。

特にモーツアルトの二重唱は明快にこの発声を大切にして欲しい。
特に下降形のモチーフが特徴的だから、下の声域に降りた時に、響きを落とさないように、高いポジションに入れたままで歌うこと。
メリスマを良く練習した。
これも発声としては同じテーマである。
低音を良くピッチを高く鼻腔に入れて歌うようにすれば、後は高音に行っても同じ場所で歌えば良いのである。

デュバリー公爵夫人のアリエッタは、何度も合わせた。
声の響きはやはり、気道共鳴が出ないように、常に鼻腔の共鳴、響きを意識した中低音を大切にすれば、後は2点C以上で喉が上がらない鼻腔への前への響きを出せると良い。
ただ、力みすぎて喉にならないように、落ち着いてゆったり歌うことを忘れないように対処して欲しい。

なんと言っても「優雅さ」がこの曲の良さだと思うから。