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いつも通りの発声練習だったが、スタッカートを混ぜてみた。
最高は3点Cくらいまでにしてドミソのパターン。1点Aから始めた。
その後、レガートでドミソで3点Eまで行ったが、通常彼女が出す高音よりも、ずっと響きの芯が
しっかりした3点Eが出せていた。

この声の調子の良さが、今日のポイントだった。

プッチーニの作品を、ということで、前回から歌いだしたが、それが好結果につながっているのだろうか?
シンコペのリズムがどうか?と思って、始めてみたマノン・レスコーのInquelle trine morbide
から始めてみた。もちろん初見であり、彼女は歌うのが初めてである。

そうして、前回も歌ったミミのムゼッタのアリアから。
前回と違って、中低音に響きが少し出て、最後の高音2点hが、抜けないでぎりぎり芯を持って保っていた。
そして、トスカのVisse d’arteも同様であった。
ボエームの「私の名はミミ」は、さすがに低音が厳しい感じ。
そして「つばめ」のアリア。
こちらも最高音は2点bだったか、前回のように抜けずに綺麗に決まった。

しかし、彼女が歌うプッチーニはどれもが実に美しい。
確かに強い発声ではないので、大劇場を朗々と響かせる声量とは行かないが、逆にそういう彼女の繊細な声があればこそ、これらの叙情的な役柄を声で浮き上がらせることが出来るのではないか?

恐らくピアノ伴奏によるコンサート、ということでいえば、むしろ彼女がこれらのアリアを歌ったほうが一般的な聴衆には受けるのではないかと思える。

ベッリーニの「夢遊病の女」から、Ah non credeamirartiを。
これが、予想に反してどころか想像以上に中低音の響きが充実して、思わずおめでとう!というくらい。
どうしてこんなに今日は調子が良かったのか?
判らないが、今までの蓄積だろう。
あるいは、多少厳しくても中低音のある曲を練習してきたからだろうか。

ともかくこの曲をこれだけ表現出来るとは思わなかった。
非常に質感の高い演奏で、伴奏を弾きながら伴奏のピアノのタッチが自分でも驚くくらい繊細に弾けたくらいである。
アンサンブルの楽しみみたいな、内なる喜び、幸福感を味わえたレッスンだった。

彼女の好調な時の声の打率がもう少し上がることを、期待したい。
ただ、これで食べてるわけでもないし、焦ったり神経質になることもないが、なんとか今日の良い調子をこれから維持して、定着して欲しいと思う。
彼女の良い調子の時の美しい高音を皆に聞いてもらいたいからだ。