NA

今日は伴奏合わせで、プーランクのAir chanteeから。
1曲目から明るく滑らかな響きで、調子の良さがうかがえた。

1曲目は伴奏とのアンサンブルがテーマだろうか。
無意識で伴奏に乗らず、自分の足取りをしっかり持つことを大切に。
というのも、前奏が無いことも関係があるだろう。
声も、最初からしっかり力強く出して欲しい。
メロディが出している雰囲気よりも、ずっとテンションを高くして丁度良いくらいである。

歌がしっかり出始めて、しっかり足取りを決めて歌えば、伴奏は付いてくるもの。
それだけ、自分の歌を確立すること。

2曲目は気持ちの良い声で、この曲の雰囲気を表せるようになってきた。
最後の高音2点bはPPが難しいので、無理に軽く抑えようとしなくて良いから、喉で力んで押さずに息で廻せるようにだけは意識しておいて欲しい。

3曲目も重さがあるし、歌詞の語感がはっきりしたことが、とても良い。テンポが遅れない限りもっとやっても良いくらいである。
中間部の虚脱感みたいなものは、もう少し意識して声に表現する意図を持っても良いだろう。

4曲目は、最初のテンポは遅すぎ、というか、安全に歌いすぎ。
ピアノもヘロヘロになる一歩手前くらい、ビンビンに飛ばして欲しい。
多少の瑕疵はあっても、テンポと乗りで聞かせることを主眼に音楽を作ってほしい。
くれぐれもシリアスまじめ過ぎないように。
この曲の表現は喜びであることを忘れないように。

これらの4曲は田舎に旅に出かけて、感じたことをまとめた典型的な歌曲形式。
そういう意味ではシューベルトなどにも良くある歌曲のタイプであり、そこから推し量ればプーランクはそれらをある意味で茶化しているし、ある意味では現代風な解釈で懐古している面がある、と思うと良いだろう。

最後にCasta Diva
前半、後半と分けると、後半の高音の声質がとても良くなった。
最終的にこのアリアの声に絶対的に相応しいかどうか?よりも、NAさんの持てる声の一番良い響きを先ずは狙うべきだろう。
口の開き方は逆三角形みたいになることで、軟口蓋が高く、また喉の開きとのバランスが良い。

良いと言った時の声は、声帯の響きだけに特化して考えると軽いかもしれないが、高音はそれで充分響くし、綺麗なのだ。
綺麗な範囲を超えてしまうと、ただ力んで高音が出ます、出ました!で終わりの声になるから、その感覚の違いだけは充分に注意し理解して欲しい。

前半だが、やはり中低音のレガートでしっかりした響きが欲しいと思った。
オペラのアリアであるし、それも導入の声を考えると今日最後に出したくらいの響きは欲しいところ。
母音のイで練習してからその響きをアに応用して練習し、最後に歌詞でも同じように響かせることを大切に考えて欲しい。

後はアレグロ楽節の中音~中高音域は、明るく上顎に響かせるような意識も欲しい。
下顎の動きに注意。
そして全体にリズム感と流れが大切。気持ちの良いリズム感と流れによる、気持ちのよい緊張感を一番に優先して欲しいくらいである。
最後の3点Cはその前の音の響きがとても綺麗なのでその延長で更に高い共鳴があるように持っていければ理想的である。
どうしても喉を慣らしてしまうが、あくまで共鳴のある響き、を出来るだけ探して欲しい。

NY

NYさん、回を重ねるごとに上達してきている。
もちろん、細かいこと、それは歌詞の扱いやフレージングなど課題は多いが、先ずはテノールとしての喉を作る、という目的に関しては目的に向って頑張っているのが良く分かる。

何が良いか?というと、発声を無理しないで、必要以上にヒロイックにならずに、喉を脱力して良い高音の響きを出そうとしていること、それが功を奏して来ていることが良く分かる声になってきた。
1点Asまではかなり良い響きになってきたので、後もう半音、1点Aを確実になるよう目標にして欲しい。

そうはいっても、歌えばなんとか1点bまで出せているし、

曲はフォーレの「或る1日の歌」
1曲目の「出会い」は声のことを言えば、2節目の最後の高音は母音のイだが、口先をもっと開いてアに近くした方が良い。
そうでないと、喉が詰まってしまうから。

2曲目はやや弱い印象があるが、今は良いだろう。
力むとまた行き過ぎてしまうから。
ただ、言葉を発音する語感としては、強さを持つべきである。

3曲目は全体に口を開いて、開いた発声を心がけて欲しい。
そのことで、柔らかい漂うような響きが出来てくるし、この曲のはかない思いに通じる声の響きになる。
CommeのオとかMeurtのoeの発音などももっと広く大きくして欲しい。
最後のAdieuxのeuxの発声ももっと口を開くことで、響きが良く出てくる。
しかし、この辺も彼は大分発声の勘所を抑えられる様になってきたことが、進歩である。

アリアはドン・ジョヴァンニのIl mio tesoro intanto
淡々と無理なく歌えて好印象。
今の彼にはちょうど良い曲である。
一つだけ、長く伸ばす声は、必ずクレッシェンド出来るように、声の入りで薄く当てて、後はお腹でしっかりクレッシェンドすることをあ忘れずに心がけて欲しい。

アイーダのCeleste Aidaという大曲まで歌った。
これはさすがにスケールがまだまだだが、無理なく歌えることは勉強の導入という観点では悪くない。
力まずに自分の声で先ずは歌うことであろう。
後は声だけで大きなことをしよう、と思わずにフレーズの歌い回しを大きく、広々とすることである。
どこでもではなく、そういう表現が可能なフレーズでは、なるべく大きくフレーズを感じて表現することである。
それはテンポ感もあるし、言葉の語感の表現でもある。

最後にメサイアの16番のアリア。
これも力まないで綺麗に歌えている、これも長い音符の扱いに注意。
軽く入ってクレッシェンド、である。

全体に力まないで丁寧に歌おうという姿勢が良い。
この調子でどんどん勉強を続けて欲しい。