HT

伴奏者が来たので、早速合わせを。
モーツアルトNon piu andrai
楽譜を見て聞き出したのだが、思わず顔を見たほど低音の処理が上手く出来ていた。
出来ていた、というのは良く出たという意味よりも、高い響きに統一させて
こもらない、潜らない発声になった、ということ。
顔を見なければ笑いながら歌っている、と聞き違えるくらい。
いっそのこと、笑いながら歌えれば素晴らしい。

強いて言えば、フォルテの表現で力んでしまって声がかすれてしまうことだろうか。
喉を力まないで腹に重心を入れて出せればよい。

Pの表現は小さくするのではなく、細く滑らかに歌うということだけでよい。
特に、出だしのNon piu avrai questa bei pennacchini,Quel capello leggero galante,の辺りのこと。

フォルテとピアノが交互してピアノが下降形のスケールを奏でる所。
ここは一種の聞かせどころで、そのダイナミックの変化を楽しんで歌おう。
ピアノもその声を応援するように。

2曲目はシューベルトのAn die musilkを高いキーで歌ってもらったが、声がきちんと出ないために軽すぎてちょっと譜読みが終わっていない印象。
そのため、再度キーを落として歌ってもらったことと、テンポをもっとゆったりとしてもらった。
そうしたら、低音もきちんと出るではないか!
低音は簡単に出ないから、テンポはそのことも加味した方が良いだろう。

3曲目は同じく「鱒」を。
これまた、テンポが速くて軽い歌になってしまった。
軽いのは良いが、声がきちんと出てこないで不消化で終わってしまう。

会場が広いから、声をしっかり響かせる意識を持って歌うためには、やはりテンポはすこし重目が良い。
ゆったり感じて歌って欲しい。
中間部のマイナー部は、少し急いても良いかもしれないが。

4曲目はシューベルトの「魔王」一度取り上げた曲だから、特に問題なし。
良く練習して更に磨きをかけていただきたい。

結局、モーツアルト「もう飛ぶまいぞこの蝶々」シューベルト「鱒」「魔王」ということに決定。

OK

久しぶりだったので、ハミングで中音域を入念に発声してから、母音に変換。
母音だけと、Jaを取り入れて、喉を温めてもらう。

曲はフォーレの「夢の後に」
一番気をつけたことは、ブレスをやたらと入れないこと。
特に出だしのDans un sommeil のあとは絶対に入れないで欲しい。
また、Les cieux pour nousの後もである。

彼女の場合は、そうやってブレスを長めに取らないと、いつまで経ってもブレス時の喉の準備を覚えないからである。
大分発声が分かってきていて、後もう少しで良いコツが手に入りそうなところ。
それは一つだけだが、ブレスあるいはブレスと関係なくても、発声の準備が出来ること。
いわゆる声を出す層みたいな場所を口の奥、軟口蓋辺りに感じられて、そこから声が出だす感覚。
それはどの母音でも同じで常にその場所から声を出そう、出し始めようという意識。

前にも教えたように、いわゆる「あくび」の状態から、導くと良いだろう。
ただし、彼女の場合は下顎を下げて喉を深くしない方が良い。
むしろ、やはり軟口蓋だ。
新幹線や飛行機に乗ったときに、耳がキーンとなったら、自分でそれを治そうとする方法は判るだろうか?
その時に働かせる口の中の器官、筋肉である。

その状態が出来ていて、それで声を出だすのである。
ブレスで息が胸に入るのは、別と思っても良い。
実際は別ではないのだが、上記の声の出し始めの感覚がわかるまでは、むしろ息を入れないくらいのほうが判りやすい。

今日の「夢の後に」では、このような声の出し始めに注意して、通常のテンポで通常のブレスポイントを徹底して守って
歌う練習をした。
まだ、きついけれど何とかフレージング出来るようになった。

後は、声の準備が上手く行けば自然に声が良いポイントで出るから、それに乗って息を吐く場所を決めて、充分フレージングすることで
息を吐ききれるから、その後のブレスも自然に良いブレスと声の準備が再び出来る、という理屈である。

短いブレスの場合は、むしろ前のフレージングの喉を変えないでブレスすべきである。
これを、息が足りないと感じて思い切り吸うために、喉の状態が変わってしまって、声のポジションが壊れて
そのために、ブレスも持たない、という悪循環に陥ってしまう。

練習では、ブレスと声の準備を確実に出来るテンポで、細かく練習して、それを積み重ねながら、1曲全体を
丁寧に組み上げて行くべきだろう。
時間がかかるが、一歩一歩確実に高い山を登って行こう!