MT
Tel jour tel nuitは6曲、Le pontを。
全体によく歌えている。ピアニストさんも違和感なく雰囲気を出せて一度通したけど、初めてにしては、ということで合格圏内。
1曲目、最初のテーマ、低音は鳴らそうとしないで喉は良く開いて出し始めること。
1点Cに向けてみじろぎもせず、声の集中力を出して欲しい。
2曲目、4分音符60は早過ぎないし、横に流れた音楽にならないでビートをきちんと感じたほうが良いと思う。
特にIl est minuitからのところは、その言葉の意味から来ている音楽を大切にすれば軽くとは行かないだろう。Des folatres lueurs nocturnesの後は相当Spを効かせて。
3曲目冒頭は、声の響きでフレージング。特に出だしのLe frontは重く、そして8分音符は流すようにして、再びPerdueを重くすると結果的にこのテンポでも上手くフレージングできるだろう。
要するに音符一つ一つの形よりも、歌詞でフレージングすること。
Je ne veux pas les lacherから、内省的な表現に変わるところを声ではっきり表して欲しい。
4曲目はやはり低音だが、良く喉を開いて深い発声を心がけて。
特に狭母音ほど口を開けて、喉の開きを促した方が良く共鳴する。音楽の緊張感を大切に。
5曲目早口言葉など良く処理できている。Les verges de l’ouragant,,,のところ、オクターブの声の響き途切れないように、レガートに。
次の小節が4/4に変わるのでリズムに気を付けて。
6曲目は、テンポ速すぎず落ち着きを大切に。愛するもの、かつて愛したものへの愛着の念。
テンポの中でその重さを良く考えて歌って欲しい。
Le pontは伴奏のテンポをよどみなく、川の流れのように、あるいは早口で喋る女性たちのお喋りのように。
しかしそれは、遠くから聞こえてくる感じで耳に心地よいものなのである。
歌はアーティキュレーションをはっきりしすぎると、レガートがそこなわえれる。むしろ柔らかさが基本だろう。
ただ、ダイナミックスのFやPのフレーズごとの差ははっきりと表して欲しい。
TT
今日も発声練習は、アクート以降の声域で声の温まりが遅い印象があったが、曲をちょっと歌うと直ぐに調子が良くなった。
Lucrezia Borgiaは、前半がとても優雅で良いのだが、歌い進むうちにブレスが少し急いだブレスのために、だんだんと音楽がせっかちな感じになってくる。
留まるところは留まり、ゆったりとブレスをして、落ち着いて歌い通すことを心がけてみて欲しい。
特に後半の盛り上がりにかけて、メリスマが多くなってくるが、ブレスをしっかり取っておいて、アゴーギグのあるフレーズを充分に見せて欲しい。そういうフレージングやブレスの余裕で音楽全体が落ち着いたものになっていくだろう。
平たく言えば、間合いだろうか。
モーツアルトIl re pastoreは、発声はとても良い。声に勢いがあったし、高音も良く響くようになった。
口を良く開けたことも関係あるのだろう。
開けると上手く行かない場合もあるから、色々試行錯誤してみることで、最適な響きのポイントを見つけられるだろう。
いずれにしても、色々試してみないことには始まらないから。
伴奏はAllegro楽章がややテンポが眠い感じになってしまった。
もっともっと演奏するものが活き活きとした、モーツアルトの諧謔性を感じて一緒にそれを感じて演奏に集中して欲しい。
そういう音形があると思う。それを良く見極め、感じることから始まるだろう。
SM
前回に比べて、歌う時の姿勢がしっかりして動かなくなったのは、発声の面でも微細であるが安定したことに寄与しているし見た目も、実は動かない方が綺麗である。
顔がしっかり首に固定されて、微動だにしないで歌っているほうが、見ていても安心できるから綺麗なのだ。
発声練習の声は調子が安定していたし、今日は声が安定して良かった。
デュパルクの「哀しい唄」は、伴奏のテンポが最初ゆっくりでどうなるか?と思ったが見事にブレスを保って歌えていた。
ピアノのアルペジョは、均一化しないで、昇り降りの物理的なスピードの違いみたいなものを出して欲しい。
要するに円運動する際の昇るエネルギー、下る勢いみたいなものである。
同じテンポでも、均一化されたアルペジョは、歌っていると非常に遅く感じられるのである。
発声としては高音に気を付けて。
特にOh quelque foisのOh,Tant de baisersのTant、Que peut etreのqueを気を付けて。
特に最初の2つの母音は、口をウにして構わない、母音どおり歌おうとするために、喉が締まった響きになるから聴きづらいのである。
ドビュッシーは、最初の通しで軽すぎてどうも声が安定しない。思い切って楽譜指示より遅く弾いてもらったらとても良くなった。
彼女の声には軽すぎるようである。
落ち着いた豊かな響きで歌うように心がければとても良い演奏になるだろう。
マスネーのオペラ「エロディアード」は、初伴奏合わせということもあり、アンサンブルに集中した。
テーマからその展開、再びテーマ、というパターンなのだが、同じテーマがその時々でテンポに違いがある。
ゆったり出るか、少し急いで出るか?というのは本来歌手の表現だから、
その辺りは、基本からやっている時間が無いから、こちらで作って決めた。
高音は良いと思うが、中低音に降りたら良く喉を開いて欲しい。
母音一つ一つをを丁寧にしっかりと発音して良い発声で歌うことをくれぐれも忘れないように。
WH
血液型によれば、興味のあることには研究熱心なタイプらしく、なかなか良く研究する人である。
今日はやや風邪気味で喉が温まるのに時間がかかった。
曲はドナウディからO del mio dolce ardor
声は問題なく、とても品の良い綺麗な歌が歌えている。
テヌートとRitをかけるべきところは充分かけて、いわゆる錆びの部分では充分に泣きを入れて歌って欲しい。
難しかったのがドニゼッティのIl balcaioro
出だしのテーマから中間部にかけて、非常に綺麗に歌え、声質にも品が感じられる素晴らしいものだった。
ただ、一箇所だけ前回も勉強した、中間のカデンツ。
ここの音取りがどうも上手く行かないために、声もしっかり出せない状況だった。
これはもう慣れと回数しかない。
何度も練習して、どうにか音は確実に取れるようになった。
また、そのせいで声も安定した。
譜読みをするときには、ただひたすら馴れることもあるが、頭を使うことも大事。
楽譜を良く見れば、音を取りやすいところ、取り難いところの差があるだろう。
取り難いところは、どこに取り難さがあるのか?
取るためのきっかけになる音が、その前にないのかどうか?
理論的に、あるいは消去法で、と色々なアタックを頭でも考えてやってみて欲しい。
ただ、闇雲にやっても時間がかかるだけであるから。
高音は、舌根が力まないように、前に声を吐き出すように舌先は奥まらないように注意してみて欲しい。
La rondine、Dorettaのアリアは、もう現状ではあまりいじらないほうが良いな、と言う程度に良く歌えている。
恐らく彼女はまだ不満だろうが、最初から理想どおりには行かない。
一回目の本番ではこれくら、2回目にはこれくらい、と段階を経ることで上手になっていくと言う現実的なことを理解して欲しい。
高音だが、最初のPで出るFolleのところは、構えて深く出すのは良いが、次の2点bから3点Cに上がる所などは、アタックで構えてしまうと
緊張がそこで限界になって、3点Cに上がれなくなってしまうから要注意!
構えないで軽く入っておいて、3点Cには入る所で極限になるようにすれば良い。
筋肉は使うべきところで使えるようにするために、その余裕を取って置くこと。
この原則はとても大切なことなので良く覚えておいて欲しい。
低音に降りて細かい16分音符で動く所は、下の声に切り替えて落ち着いてはっきり歌ったほうが良いだろう。
MM
今日は前回に比べて、再びベッリーニのAh non credea mirartiが不調で始まった。
いつものパターンだが、声がしっかり出ない。
そのために、中高音以降が喉が高くなって、ますますしっかり出ない、という悪循環である。
今日は発音を利用して、しっかり喉を開く、しっかり軟口蓋を上げる、要するに口の中を良く言えば「作る」ようにして
必然的にしっかりした発声を引き出すようにしてみた。
どうしてしっかり出てこないのか?が良く判らないのだが、声の調子に左右されるのだろうか?
声が当たらない感覚が気持ち悪いのであれば、それはそれとして、しっかり開いておいて、呼気だけはしっかり出すという
ことだけは、最低限意識して欲しいのである。
それから、彼女の感覚は類推になるが、力まないことを意識しているのであれば、それは一端取り払っても良いから
もっと発声を作る意識を出して欲しい。
特に口の中の開く具合、喉の開き具合、軟口蓋の上げ具合で、声の共鳴が出るポイントをしっかり「作る」ことである。
そのために、顎に力が入っても、喉に力が入っても今は構わない。
もちろん上記のことを実現するためには、最低限しっかりした呼気は必要である。
おずおずと出していては駄目だ。
ベッリーニのアリア、最後のカデンツはくれぐれも恐る恐る声を出さないでほしい。良く喉を開いてしっかりした声で自信を持って歌うこと。
ブレスポイントを再度確認。
というようなことで1時間レッスン。
どの曲も同じテーマであるが、終わる頃にはシャブリエのLe sentire sombreもCredo d’amourは声が良く出てとても良い声で明快な歌になった。
アーティキュレーションによって、口腔内の開き具合をしっかり作る方法は、彼女の場合とても有効であると思う。