OM

前回から2回目だが、今日のレッスンで彼女の声の傾向は大分良く判った。
全体に喉そのものの扱いはとてでも綺麗で、無理が無いと思う。

これから少しずつ覚えて欲しいのは母音の響きの状態を作ること、そのことに敏感になること。
母音の響きの質で大切な共鳴するポイントを良く探すこと、見つけること、それを大切にすること。

現在は、共鳴よりも声帯の響きで歌っている傾向が強いため、母音による共鳴がほとんど意識されていないように感じる。
そのことが、少なくとも今日聴いたフランス語の歌唱における、響きの浅さや不揃いであることに繋がっているように思われた。

今日はChaussonのLe colibriとDebussyのNuit d’etoileを集中的に練習。

子供の頃から合唱でもやっていたのか?
母音発声の口の使い方に特有のものがあって、それがフランス語の特にEのあいまい母音の処理や、他のフランス語固有の母音処理で、暗くこもったような感じ、あるいは浅い響きになるのを、かなりしつこく直す結果となった。
しかし、とても飲み込みの良い人で、1時間余りのレッスンで大分感じを掴んでくれた。

フランス語歌唱でも特にEのあいまい母音の処理は難しくて、なかなか癖が取れないものだが、何しろ熱心な方である。
何とかして自分のものにしよう、という熱意と執拗さがあるから、こちらも教え甲斐がある。

また、逆にUの母音などは、浅くなってしまうか、深すぎるかどちらかになる?
ドイツ語やイタリア語のようにあまりオに近いようにしないで、口先は狭く奥に深いだけのほうが良いだろう。
特にNuit d’etoileに出てくる、AmourのUなどは、語感に大きな関係が出てくるので大切にして欲しいし、逆に曲の冒頭に出てくるEtoileの次にSousと出てきた場合、Eのあいまい母音とSousの深いUとの違いを明快にして欲しい。

また、Waなどの、これもフランス語固有の語感も素早く広がる開母音の美しさ、明るさなどを大切に綺麗に処理していただきたい。
Voirはヴォワールでなくヴワールとでも言おうか、子音と母音の正確な関係も良く知っておくと良い。

また、全体的には、中音域で、概ね響きが前過ぎ、声帯の響きが直に出てしまう感じがある。
もう少し奥で、気道上か鼻腔にかけての、共鳴を作る場所で共鳴させる意識をこれから育てて欲しいところである。
共鳴がもっと意識できると、もっと楽に声が出せるであろう。
そのことで、母音による響きの違いや、音程の違いによる響きの変わり方に対して自然と
これは、中低音~中高音域である。

これは本人も知っていることとは思うが、もっと上顎側のいわゆる天井をしっかり高く持ち上げるような母音発声の意識も必要だろう。
特にAEOなどの開母音である。
全体にEも狭く出しているが、もっと大きく広く出せることも覚えていくと、中音域だけでなく、高音も違う声質が出てくるであろう。

やればやっただけ、進歩がみるみる出てくるし、また伸び盛りで、吸収力旺盛な方なので、これからが楽しみである。
フランス語ならフランス語での母音の響きや歌い回しを覚えることで、また、他の言語の扱いにも応用が効くはずである。
すなわち、語感と声の関係ということにおいては、どの言語も同じだからである。

次回は、喉の使い方にも少し及んでみたい。
狭母音の響きから、その響きを開母音にも応用することなどのイメージを考えている。