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初めての方。
合唱を若い頃からされていて、今も継続中。
社会的ステータスの高い研究職であるし、プライベートで歌を楽しまれる趣味にお忙しい毎日のようである。

発声を軽くやってみると、体格の良さと若い高校生時代に鍛えただけあって、非常に安定した喉、という印象である。
姿勢に無理が無く、身体の重心がまったく自然に低いところのつぼにはまっている。
であるから、喉も自然に深いポイントで安定しているように見受けられる。

特に初心者には難しい2点F前後の換声区の問題は完全にクリアされて、声も全体にミックスされた響きである。
また、合唱ではアルトを歌っていること、あるいは声帯の大きさもあって、無理の無い低音の声区を使うテクニックもほぼマスターできている。
地声にならずに、1点Cより下の領域まで発声出来ている。

強いて言えば、2点G以上が喉が締まる傾向があるが、私の見立てでは、単に普段使わないために馴れていない、という感じである。

勿論、3点C以上は難しいと思うが、練習次第で使えるようになるだろう。
後は、高音発声で歌うことを厭わない感覚の問題が大きいと思う。

今日は、軽くトスティのPreghieraを歌った。
最初は、低いキーのヴァージョンだったので、最高音でも2点Gで、ほぼ言うことのない発声であった。
さすがに合唱で鍛えているだけあり、息の回った、無理の無い柔らかい発声で、好感が持てた。

高音を少し出せるようになってみたい、というご希望があるようだったので、それでは、ということで、この曲のキーを1音上げた、通常のヴァージョンで練習してみた。

換声点の問題がクリアできているので、5線の中であれば、キーが何であれ、ほぼ問題なしだが、
さすがに、最後の高音が2点Aになると、喉が締まってくる。

高くなってくると、それまで落ち着いていた大人の女性の声が、突然若い女の子の声になってしまう。
それは、無意識の高音への備えで口を横に開いてしまうことが大きいだろう。
高音に昇るフレーズの場合、上り始めるその前から、喉を準備させるための、いわば、フレーズ中のチェンジ行為みたいな
ことを、練習して身に付けられると良いだろう。

また、難しく考えなくても積極的に歌いこんでいけば、嫌でも体が反応してくると思う。

声の基礎が確立しているので、更にレパートリーを拡げて、練習されていけば、ソロ歌手としても良い成果を上げられるようになるのではないだろうか。