TK

発声練習はいつものように、下降形で少し高め、2点G~Aくらいまでを練習して、最後に地声領域の練習。
声区1つ分を飛ばした形で、低い声区のまま上がっても、2点Eくらいまで、平気である。
但し、その上にチェンジすると、段差が大きい。
やはり彼女の通常の声区は、2点G以上で頻繁に使う声区ではないか?と思える。
もう少し練習すれば、更に下の声区が上に伸びると思う。

今日は新しいバッハのカンタータで9番から練習した。
譜読みは何も問題ない。
レシタティーヴォは、発音でpfeilの子音に注意!
前半のゆったりから、Adagioになって、prestoに変わる点も注意。
その後アリアはPrestoとなる。

アリアも、ドイツ語の発音と、特にトレモロの練習になった。
トレモロは、喉が硬いと動かないからトレモロは出来ない。
Rの発音で舌が柔らかくないと出来ないのと似ている。

まず2度の音程でゆっくり練習して、少しずつ速くしていこう。
慣れてくると、速く動かせるようになるが、焦りは禁物。
それから、動かすきっかけを大きく作ってから(最初の振幅を大きく)徐々に細かくしていく、という方法でも良いだろう。
いずれにしても、速く動かせることを目的に練習して欲しい。
後、音域が低めなので、特に低音域は、響きを高く、ピッチを大切に。力まないことである。

10番は譜読み、とドイツ語の読みが中心になった。
こちらも伴奏と歌とのアンサンブルが絶妙な音楽で、えも言われない美しさに満ちている。
言われなければ宗教音楽とは思えないのだが、バッハのある種の耽美的な美しさは宗教曲であるが故に、独特だ。
その後の欧州の名高い作曲家達の、様々なモチーフやスタイルの元になっていることを感じさせてくれる。
興味深く、面白い。

SM

発声練習もそこそこに、近々にある本番のパミーナの詠唱を練習した。
勿論、伴奏付きである。

このアリアは、以前も勉強したし、彼女の声に合っていると思うので推薦した。
発声上、無理が無いのである。

ただ、この曲は意外と難しいのがテンポである。
また、改めて今日思ったのは、伴奏がきちっとIn tempoで徹頭徹尾押し通すだけの力量があるかどうか?
テンポがきちっと一定でないと、この曲の妙味がない。
1・34・6という具合に、3拍4拍が間が空かないが、ここで何をするか?だと思う。

声はほとんど言うことがない。綺麗に出せている。
また、暗譜で演劇的な表情を付けて歌えている。
高音も丁寧だ。まだ少し締まる傾向、喉が高い傾向があるにはあるが、無理しないので好感の持てる声になっていると思う。

今やるべきことは、伴奏との合わせだろう。それも今日色々動かしたテンポである。
8分音符72は彼女には苦しいだろう。無理ではないが。
80をMaximとして、その中間で決められれば良いのではないだろうか。

この曲は早すぎても、表現がそぐわないし、かといって声が持っていない、無理なスローテンポも聞き苦しいところである。無理のない範囲で、このアリアの表そうとしている苦悩を、テンポの保持をしっかりする、という点で気をつけて欲しい。
特に前半の長いメリスマで、勝手に動かさないこと、ここでもイン・テンポである。

最後にドビュッシーの「放蕩息子」リアのアリア。
このところ、良く練習してきただけあって、基本的なところは抑えられた歌になった。
後は、発音を更に明快に、確実に、そして発音と関係のあるフレーズのリズムをしっかり出せれば、良いだろう。
落ち着いて、ゆったりすること、あるいは落ち着いて素早く歌うこと、という、いずれにしても「落ち着いた対処」を覚えて欲しい。
それは、音符だけを見ていても漠然としてしまうのである。
発音、言葉を見て対処できれば、音符に支配されずに、落ち着いて対処出来るようになる。

MM

トスティ、Ricordati di me
いかにも、戦前のラジオから流れてきそうな、カンツォーネ風の素敵な歌曲だ。
サンバ・カンサオ~ンや、タンゴにもありそうなメロディ。
好きで選んだけあって、良い歌を歌ってくれた。

いつも言うとおりのイタリア語の抑揚を出す感じは、少し上手くなった。
この調子で、もっともっと!である。
多少メロディライン、リズム形が崩れても良いから、言葉の抑揚を出そう。
必然的に子音の処理も素早くなければならない。

次は、メンデルスゾーンのDer blumenstraus
いかにもドイツ風、メヌエット風の瀟洒な歌曲である。
母音を広く取らないで、なるべく集めて濃密な声の響きのレガートを探すと良いだろう。
当然、発音の際の口の使い方に注意。
いつも言うとおり、特にエとイでの口の横開きに注意である。

一番、難しかっのたが、モーツアルトのコンサートアリア。
最初は2点C~F辺りの音域が、歌詞発音がモガモガしてしまった。
この場合、意識して響きを返さないように、ということは喉が上がらないように。
顎を引いて鼻腔に入れるように響きを集めてみよう。
のど側は、むしろ開かないようなイメージである。

それから、メリスマは、むしろ中低音域が難しい。
なるべく上の声区のままで出す方が良いだろう。
特に上から下に下りる場合、要注意である。

低音の響きは、上の声区ときっちり合わせるためにも、なるべく高い集まった響きを。
そのためにも、胸に降ろさないで頭声を徹底して欲しい。