NS
発声練習で、調子が良かったので少し違うことをやってみた。
なるべく下の声を上まで持ち上げる発声。
俗に言う、音程を下から取るというやり方だが、実際は決して下から取らないしピッチも高くすることは出来る。
声区をあまり変化させないように高音まで持ち上げるために、しっかりした輝かしい声を作る発声、といえば良いだろうか。
これを重い声と取るか、しっかりした輝かしい声と取るかは、ピッチがきちっと決まっているかどうか?
にあるだろう。
そのために、上顎の使い方は大切だ。
曲は、フォーレのDans les ruines d’une abeilleから。高いキー。
教えたことは、フレーズ毎の発音、特に母音の形と響き。
OEの発音が押しなべて狭いので、広く、開いた響きを。
後は子音のLをはっきり舌先を意識して発音。
それぞれの母音を明快にはっきりと、かつ滑らかに歌うために、テンポが少しゆったりしても構わないし
その方が良いくらいである。
2曲目、Nocturneは、オリジナルはどうやっても低すぎると思う。
試みにモラーヌが歌っていたオリジナルより4度高いキーで歌ってもらうと、彼女の声にピッタリであった。
最高音がGesで、中音域に当るメロディがビブラートが自然に取れてとても綺麗である。
これも、基本的に前曲と同じことを練習した。
3曲目にSoir
後期のアルベール・サマンの詩につけた一連の歌曲で、中でも有名なものである。
こちらは、冒頭の声から、最高の良い声を出そう。
Nocturneのようなクールな声ではなく、しっかりと密度のある低音の良い声を目指したい。
母音の響きや形を追求する勉強の方法は同じことである。
最後にCarmenのHabanelaを。
出だしのマイナー部分の声は、レガートにピッチを高めに取ってメッザヴォーチェを心がけよう。
声を前に集めた熱い声を最初から出すと、飽きてしまう。
最初のマイナー部分は、開いたノンビブラートな唱法で歌うことで、むしろアンニュイな色気が出ると思うのだが。
その代わりメジャーに転調してから、声を前に出して積極的に歌うことで、対比感がはっきりするであろう。
この辺りの声の使い分けはぜひとも必要である。そしてそうすることで、歌詞の内容にも沿うことに結果的になると思う。
彼女にこれから覚えてもらいたいことは、Voyelle clairとVoyelle sombreの違いを声で明快に表現出来るようになること。
そして、声そのものの質として、開いた息のミックスした声と、声帯の合った前に当った輝かしい声の2種類の声を使い分けられることである。