GH
レッスンの始まり頃は、やや声が力み勝ちであったが、歌うにつれリラックスし、響きもまろやかで良くなった。
やはり1点C以上の高音発声が、もう少し上手く行くようになると、最初から力まないで歌えるようになるであろう。
アマリッリは、伴奏も関係するが、始まりの節をビートで歌わずにフレーズで自由に歌ってもらうようにした。
ビートで歌わないで、フレーズだけでアカペラのように歌うのである。
そして、Credilo purから、In tempoになる。
ただ、Ah!prim’ilpettoのところは、最大限フレーズを活かすように、伴奏が考えなければならないだろう。
ピアノ伴奏の刻みが要注意である。
最後、長調に転調してからは、歌手はもっと自由に伸ばして欲しい。
そして、最後のE’il mio amoreは、もっと堂々とゆったりとして欲しい。
レッスン時に、名前が度忘れで出てこなかったのは、中世のブリテンのアーサー王のことである。ショーン・コネリー演じた、アーサー王のイメージのように歌って欲しいのである!
要するに、堂々と、である。声の大きさではない。堂々と、である。
「冬の旅」「道しるべ」は、やはりテンポになった。
テンポというか8分音符の刻み方。もっとシンプルに淡々と、である。
歌も、最初から歌いすぎないこと。淡々と歌い始めて、必要なところで情熱が出れば良い。
最初から歌いすぎると、拒否されてしまう。
「おやすみ」は、微妙にテンポを速くした、
前曲である「道しるべ」と並んだ時に、こちらがテンションが高い方が、イメージが良いと思ったからである。
テンションが高い=テンポの活発さ、と考えた。
歌っている様子は、非常に良い集中が出来ていて、良い演奏であった。
本番もこのままで充分に通用すると思う。
NK
モーツアルトの歌曲、3曲。
どの曲も、ここに来る前から既に持っている持ち声に加えて、良く勉強してくれた。
3曲、それぞれを2回ずつくらい練習した。
An chloeは、テンポ良く弾いてみたが、リズム感が良く、綺麗に歌えていた。
この曲特有の音程が上がるフレーズが、2点Esに上がるのだが、ちょうど声のチェンジ領域で気になったらしい。
だが、こちらの耳にはほとんど気にならない。
声が裏返るのだが、下側の声は頭声が混ざっているので段差が付かない。
上側の声の問題と感じているらしかったが、このような短いフレーズであれば、まったく問題なしだった。
Das Veilchenだけが、暗譜が不確かな部分があったので、何度も練習をした。
この曲は、伴奏の付け方で表情がいくらでも付くのが面白い。
その辺りは歌手の力量もあるのだろう。
力量と言うか受け止め方、だろうか。
彼女はその辺りのポテンシャルは高いものがある、と思う。
運動でいえば、いわゆる運動神経みたいなもの、だろうか。
Ridente la calmaが、こちらは一番心配だったが、彼女はまったく意に介さないようであった。
高音への上昇フレーズが3回続くところが、ブレスが心配だったが、これも何度か通したが、まったく問題なしだった。
本番のステージは、集中力だけ。目線を決めて、余計な事を考えずに歌えば、充分に通用するものになると思う。
ME
今日は本番前最後のレッスンだが、今回はあまりレッスンが出来なかった。
しかしながら、その分をかなり練ってきてくれたことが良く判る演奏で、とても良かった。
フォーレの歌曲、4曲どれもが、その曲に相応しい表現を持って演奏出来ていた。
L’auroreは、大体がフレーズの終わり、詩の脚韻にあたる部分の声が弱い、あるいは響きが
逃げて抜けている場合があるのを直した。
Lydiaは、テンポ、声共にとても良かった。
強いて言えば、中低音の声の響きをもう少したっぷり出せれば、更に良かっただろう。
Ici basは、とても美しく歌えていた。
子音のRとLの区別を大切に。フランス語のRは、声楽の場合普通の巻き舌でOKだが、出し過ぎないように。
ただ、LとRが違うことは意識して欲しい。特に語尾のRは、出しすぎないで良いのだが、聞こえないのも始末が良くないと思う。
La roseは、テンポも良かったのだが、危なげが無さ過ぎて慎重な演奏になり、この曲の持つ情熱が出し切れていなかった。
その辺りは、特にピアニストさんにお願いしたい部分である。勢いも大切に。
4曲とも、それぞれの曲の表現が綺麗に良く出せていて、充分にその魅力を伝えられるレベルである。
本番に関しては、心配はないが、強いて言えば上がってしまって、ブレスがちゃんと入らず、フレーズがきちんと
伸ばしきれなかったり、フレーズの終わりが抜けてしまうことである。
レッスンでも話したが、気分に依存してしまうニュアンスとか雰囲気作りよりも、まずは習字で言えば楷書体の一点一画をゆるがせにしない書き方=歌い方が出来れば大成功と思う。
AY
今日は、疲れていたのか、非常にナーバスで声の調子も今ひとつであった。
本人も自覚があったので、こればかりは致し方ない。
大体が集中していないと、身体、特に呼吸器は、息が浅くなる。
浅くなると、喉がぶらぶらになって、ちゃんとした声が出なくなるわけである。
いわゆるお腹から出ない声になってしまう。
この辺りに関しては、恐らく発声のコツが、まだ言葉として具体的につかめていないのではないだろうか?
もう少し完全につかめると、体調が悪いなら悪いで、呼吸の仕方や、口の開け方を自ずと変えて、発声を意識すると思うのだ。
見ていると、どうにも口が開けられなくなって、喉が開かないで歌ってしまう。
そのまま高音を出してしまうので、喉が疲れてしまう、という悪循環に陥ってしまう。
それでもケルビーノのVoi che s’apeteは、テンポを活発にして良くなった。
ピアノの左手のベースは、強拍を強調しないでフレーズで弾くようにすること。
そうすると、調子が悪くて前に進まない歌も、段々進んでくるようである。
スザンナのアリアは、テンポが早くなるので、ゆったりにしたが、どうにも調子が出なかった。
調子が出ないまま高音を出すから、なおのこと、調子を崩してしまった。
しかし、ここで投げやりにならないで、最後まで頑張って、調子を戻してくれた。
ここが、今までの彼女と違うところである。
これなら、本番はどんな状況になっても、大丈夫だろう、と安心できた。
本番前、最後のレッスンとなったが、このような状況でも歌い通せた経験は大きいと思う。
本番は、楽しく思い切って歌えるようにと願っている。