TK
本番を終わって、1回目のレッスン。声の調子は相変わらず良かった。
よく集まった中高音域の声を持っているが、これに加えて、もう少し喉を開いた発声を覚えて、自然な低音の共鳴がある響きを覚えたいところ。また、そのことで、集まっているだけではなく、良い意味で息の太さのある中高音の声が副産物的に出てくると思う。
下降形の発声で、低音になるほど喉奥を広げるように口を開けて発声する練習をした。
単に口先を開けるのではなく、喉奥を拡げるようにするために、口を開くことが肝要である。
これは、間違うと声がすかすかになる点に注意。
声帯の振動の問題ではなく、むしろ声の響きの共鳴を見つけるためである。
これは、後でレッスンしたSMさん、MMさん共に同じことが必要であると思った。
今日から新しい曲で、バッハのカンタータ36番から、Scwingt freudig euch empor
声の声部と、伴奏の声部との、対照的な関係が、入れ替わり立ち替わり、またそのせいで、自然に出てくる音のずれ、経過音的な
響きが、新鮮であり、モダンな印象を与える。
それだけに、声の声部は、正確な音程感が大切になってくる。
今日はその領域まで立ち入れず、譜読みをしっかりするところで終わった。
音域的には微妙で、やや低めな所もあるので音程にはシビアになるだろう。
ピアノの響きにも影響されるので、その点でも低音の声量は要求されるかもしれない。
SM
発声練習で良かったのは、2点Fから上の声で良いところに響きが入っていく感じが掴めてきた事。
ただ、気をつけないと太い胸声の声だけになってしまう。その辺りの力加減とバランスがまだ難しさが残っている。
逆に低音は、喉の鳴らし方ではなく、口奥の開け方、開け具合で響きの共鳴を見つける方法が判ると、低音はまたし出易くなるだろうし、
聞こえる低音の声になるだろう。
これは前のTKさんと一緒で、我慢して身体で覚えるしかない。
言葉で伝えようとするならば、声帯そのものの響き、振動、鳴り方、を開発して行くのではなく、そこから上、つまり気道とか軟口蓋とか、声の響きに共鳴を作る(与える)部分を作ること、となるだろうか。
口の開け具合によって、喉から軟口蓋にかけての、部分を声の響きが共鳴するように調節することである。
曲はフォーレの「月の光」から。
リズムは3/4拍子なのだが、6/8と捉えて、ただし2拍子としてではなく、6拍子にして譜読み、リズム読みを確実にして欲しい。
それがないと、今日のように声をきちんと練習することが出来ないであろう。
このことは、特に「ルイーズ」で顕著になる。
長い音符が多いこの曲の場合、テンポの揺れも多いため、最初にきちんとしたテンポを作っておかないと、音楽が迷宮入りしてしまうであろう。
リズムはひたすら、コツコツと積み上げるしかない。
ただ、要領はあると思う。
少なくとも、曲をリズムで分析するための方法は知っていて損は無いとだろう。
それも小難しいことではなく、長い音符を短い単位で判るように図示してみたり、拍子を倍にして数えてみる、などのように、ちょっとした工夫で分析してみることは、結局は歌声にとっても有意義な方法になると思う。
WH
発声は声を温める練習程度で、早速、ミカエラのアリアを歌ってもらった。
譜読み的には未完成な部分が残るせいか、まだ歌全体がどっしりとした感じになれない状況。
譜読みは、なんと言ってもリズムで、リズム感がしっかり持てないと、声もしっかりしてこない。
重いとか軽いとか言う以前の問題なので、この曲に固有のリズム感を確実にものにしてもらいたい。
漠然と流して歌うだけではなく、小さいフレーズで確実にしてから、大きなフレーズに発展していくような練習方法を大切に。
前のSMさんもそうだが、長い音符は、その中にある細かい音符、例えば4分音符なら8分音符の単位にして、リズムを取る練習が必要である。特に、6/8などの、8分音符系のリズムは、長い音符が適当になることが多いのである。
最初から2拍子で歌わないで、きちっと6拍子を数えて歌うことで、例えば4分音符+8分音符がタイ記号で繋がっているメロディーを
歌う際に、判り易くなるであろう。
譜面を見て、リズムを確実に理解するために、譜面上に何拍になっているかが一目で判るように、書き込みを入れることも試して頂きたい。
後は、椿姫のAddio del passatoを練習した。
この曲はメッザヴォーチェとたっぷりしたヴォリュームの声の対比が美しい曲だが、今の彼女の場合は
あまりメッザヴォーチェを気にしない方が良いと思う。
特に、2点Fから上の声は、喉が上がってスカスカの声になる可能性が大きいので、注意が必要だと思う。
しかしながら、時として驚くほど良い声が出てくるところが、彼女らしい直感に満ちたところで、面白い。
これからの、練習次第で完成度が高くなると思うので期待したい。
MM
発声練習の声はコンスタントに良いポイントになりつつある。コツが大分つかめて来ているのだろう、と感じた。
曲はモーツアルトの「夕べの想い」から。
軽く流す程度にしたが、全体に声を抑えないで歌う方が良いと思った。
抑えると、喉の開きの悪い、というか、喉がブラブラの浅い響きになってしまう。
彼女の声であれば、明快にメゾソプラノらしい声を、作る意識の方が確実に良い、と思われた。
それは、メンデルスゾーンのNachtliedでも同様の感想である。
特に2点Cから下の声は、低音の声区で、ここでも声を作るような意識が必要であろう。
それを発声的に言い換えれば、共鳴を見つける、でも良いであろう。
高音にも共鳴はあるが、低音も同じく共鳴と考えた方が、喉にも無理は無い。
ただ、作る、という以上は、最初は力みが必要である。
力まないで最初からは何も出来ないからである。
彼女の場合は、リズムを中心としたソルフェージュ的にはあまり課題を感じない。
それよりも、声の直感的な扱いに対しては、良い声を出すための論理的な方法論を確立することが大切ではないだろうか。
最後にサティのJe te veuxを練習。
この曲では、フランス語の発音を正しく綺麗にそして明快に、という意図を持つことで、結果的に中低音の声に綺麗な
共鳴が出るように持って行きたい。
そのために、発音の明快さを良く出すことに意を注いで練習をした。