KY
発声練習の最初に、下降形で2点Dから上に2点bまで上がっていったのだが、この声がとても良かったのが今日の収穫。
前回、下顎の力みを注意して、中を高く高い所から声をアタックということで練習したのを、忠実に守ってくれた。
後は、これで下から昇るフレーズでも高音域をこの声にチェンジできれば、言うことはないくらいである。
ただ、なかなか問屋は降ろしてくれいないようで、上向形になると、最初の低音で力んでしまう。
そこで、何度か高音からアタックして降りる下降形で練習をして、中低音の力まないミックスボイスをつかんでもらった。
こつを掴めば、これは比較的簡単に判るであろう。
この方法で高音まで滑らかに歌う練習をした。
曲は、イタリア古典からPiacer d’amorの高声用のバージョン。全音版だと35Bという方だ。
意外と高音が出てくるのだが、彼女にこちらを選んだのは、この音域で練習した方が、中高音のミックスボイスから高音に至る
声の練習を、嫌でもせざるを得ないからである。
見ていると、まだ下顎側で力んでしまう傾向が、口の開き方にあるようで、頬とか、顔面の上半分お筋肉が使いきれてない感じである。
積極的に使って、上顎の奥の天井を高くして、そこで歌うイメージを掴んで欲しい。
最後にフォーレの「リディア」を練習した。
ここでも、以前見られた、中高音の喉の突っ張りは大分陰を潜めて来たようである。
今が、チャンスなので、何とかこの発声のコツを手に入れて欲しいものである。
高音が難しかったら、低音の発声だけでも慎重に大切にお願いしたい。
GH
今日のポイントは、やはり高音発声になるだろうか。
そして、中低音域の良いピッチと声質、響きの滑らかさ、も大切な要素であった。
Vittoria mio coreから始めた。
前後のこの曲のモチーフの歌声は良いのだが、メリスマの音程感、声質と、中間部の高音域が、難しい。
メリスマは、歌のフレーズと分けて考えた方が良い。
まず、長いブレスを歌わなければならないことと、細かく動かさなければならない、音楽的な特性を考えれば、
自ずと、声質をどうするか?が決まる。
中低音からなるべく響きを鼻腔に集めて、息漏れがないように発声して、そのまま高音に持って行くべきだろう。
それから、中間部だが、チェンジ以降の高音域を、声を太くしようとして、大きな声を出すと、今度は高音が出難くて、引きつったような声の状態になりそうである。
それでも、無理な声を出さない人なので、問題になるほどではないが、出し難いのは確かであろう。
それで、ブレスから胸を高く開く身体使いを練習した。
以前も練習したと思うが、下腹部に踏ん張ると、確かに低音は一瞬鳴る感じがするが、高音域のチェンジにはまったく対応出来ないはずである。
出来たとしても、コントロール不能であろう。
ブレスで、胸を高く開くことで頭声域の発声に、喉が対処しやすくなる、いわゆる声帯が適度に開いた発声になり易いと思って頂ければ良い。実際、この発声だと低音も喉が開いて、くるのが判ったと思う。
それは、間接的に顎を引いた姿勢になるからであろう。
「冬の旅」の「あふるる涙」では、徹底してこの発声で、中低音域のピッチと声質の滑らかさを追った。
完成度の高い歌曲演奏には欠かせない、声のこだわりを追求して欲しい。
同じく「休息」では、低音を響かせるコツを教えた。
喉で力まないで、しっかり顎を引いておいて、鳴らすように。
その際、絶対に息漏れを起こさないように、響きに集中することと、力を使う必要はあるだろう。
低音の弦がしっかり張られて、響きが出るようになったら成功である。
TF
発声練習は、胸を高く開くようにして、声のアタックをする練習で始めた。
日曜日のHNさんで試してみた方法である。
両手を胸の前方40センチくらいに置いて、ブレスを吸う時に胸を開くために、両側に開いて行くのである。
そして、開き切る前に、声を出し始めてそのまま息を吐き切るために、両手を開き切るのである。
これが、彼女の場合なかなか難しいのは、それだけブレスから声のアタックへ、という回路で、身体が硬くなっている証拠だと思う。
手を前にして、声を出そうと意識しただけで、手を開く以前に、ブレスを入れてしまったり、逆に手を開くという動作をしていても
ブレスをきちんと入れないで声を出してしまったり、という具合。
これだけ取っても、自然にしなやかに、という発声のための身体動作に、支障が起きているのが判ると思う。
それから、もう一点は、やはり音程であるが、最初はもう何回も練習して、音程を合わせるようにすると合ってくる。
どうしても、癖で口を縦に開けて、声帯を太く使ってしまい、喉の引き上げが上手く行かないようである。
そのため、時間をかけて発声をすれば、自然に柔軟になってくるようで、音程が合ってくるのだ、と考えられる。
ただ、この方法は対処療法的であり、根本的な解決方法ではない。
結局、曲の練習でやってみて確信するのは、口の使い方が音程を♭にさせる理由がある、ということ。
癖なので、直し難いとは思うが、徹底して口の使い方を治してみてもらいたい。
逆三角形、あるいは横にするだけでも良いが、特にAの母音で、口を縦にするのを、横に開くようにした方が良い。
一番判りやすいのが、Eを発声する状態がとても軟口蓋を上げるのに良いことである。
従って、Eの母音発声の状態を、音程が悪い、AとかOに応用することである。
必然的に口の形は、逆三角形、ハロウィンのかぼちゃの口、である。
鏡を見ながら発声、歌唱練習をすることをお勧めする。
また、これも癖だが歌うと力むためか、目をつぶったり、真っ直ぐ前を見ないで歌う癖も、直せるだろう。
自分の顔を見て歌う癖、である。
そのことで、真っ直ぐ前を見て歌えるし、顔をぐらぐらさせないで歌えるであろう。
日本歌曲2曲は、発声練習の成果で、どれも大過なく歌えたと思う。
モーツアルトだけは、口を縦にして結果的に音程が悪くなる癖が出ていたので、これも上記の練習で修正して行った。
NS
発声練習は、中低音中心にした。
軽く出している印象であった。
フォーレのNellから。
テンポ、歌声ともに良かった。声は声量が出ているし、明るい。
後は、ピアノ伴奏が強弱を更に付けると、全体のメリハリが出るだろう。
Soir
歌うテンポ感と声の関係でいえば、ゆったり目で良いのだが、声の深さ、ブレスの深さが今一歩だった。
最初のアルペジョの和音を聞くときに、下の1点Cの響きをイメージして、声の1点Fを出して欲しい。
後は、最後まで徹頭徹尾In tempoで良いだろう。
特に、最後のTes yeux leves au ciel si triste et si douxのところ。
Si tristeの語尾のteは、音程が下がるが響きを絶対に落とさないように。Siが後ろで、Teの響きは鼻腔に前である。
ハバネラは、声のこと、ブレスのことは、解決出来ていると思う。
テンポが、やはり一歩足らず、微妙にダンス出来ないテンポというのだろうか?
リズムが小節ごとに途切れてしまうので、良く言えばきちんとしているが、悪く言えば色気のない音楽になってしまった。
同じテンポの繰り返しというのは、繰り返すこと、すなわち延々と続くことに意味と目的があるわけで、そこに小節という区切りが出来てしまうのは、まずいと思う。
彼女のこととは関係ないが、譜読み一般について・・・
小節線のこと。これは、譜読みの便宜上あると思ったほうが良いだろう。
フレーズとは強い関係があるわけではないことが、多いのである。
これの役割は、リズム読みを容易にするためと思っている。
音楽が複雑になっていると、小節線があるおかげで、何拍子ということを常に把握出来るメリットがある、というわけ。
最後に彼女が関わっている童謡について。
初めて聞かせてもらったが、やや声を作っている印象があった。「どうぶつえんのよる」という曲。
確かにクラシックではないのだが、子供とて良い声は判るであろう。
仮に浅い声にするならするで良いのだが、それならば、きちっと合わせた声にしたほうが良いだろう。
少し息漏れが出て、カサカサしてしまうのはまずいと思う。