今回の試演会は、新たにスタジオに来られ初参加となった方々が中心となりました。
そのため、まさに試演会というタイトルにふさわしい発表会でありました。
全体的には皆さんの熱演が功を奏して、好印象に終始しました。
会場でもお話しさせてもらいましたが、レッスン室で判断しかねた方の課題や方向性が明解になりました。
この意味でも、試演会をやった価値はあったと思えたのです。
細かいことは、各人の感想に書いておきました。かなり辛口に書いたつもりですが、すべて私の指導者としての本音です。
ありきたりの誉め言葉は書いていませんが、試演会ですから勉強会のつもりでご理解ください。
一方、これも会場で話しましたが、ピアノ伴奏の重要性。
今回3名の方にお願いしましたが、まったく違う個性が出ていて、大変興味深かったです。
改めて思ったことは、例えば、初心者の簡単なイタリア歌曲にこそ難しさがあることです。
特に初心者の演奏は、伴奏の腕次第でいかようにもなる!と言っても過言ではないでしょう。
バロック音楽には、近代ロマン派の礎になる様々なキータームが宝物のように埋まっています。
ところで、皆さんにとって今回の試演会への参加は意味あるものになったのでしょうか?
実は、今回終わった後にいくつかの問題が起こり、ホームページの更新をする気がすっかり失せていました。
スタジオ運営と指導と両立が難しいのです。
色々な問題が起こると、本当は自分が歌っているだけが一番幸せなのでは?と思ったりもしました。
しかし、結論は私の指導者としての徳が問われているわけだから忍耐あるのみ、と気を取り直し、遅くなりましたがこの講評を書き上げました。
最後に愚痴ってしまいましたが、みなさんの演奏の貴重さには、心からの敬意と感謝の意を表します。
下記、今回の出演者それぞれが書いた感想をまとめてあります。
注:(なお、今回は演奏の動画をyoutubeに掲載しておりません。今回の出演者で動画を見たい方は他の方法で配布しますので、ご連絡ください。)
出演者(イニシャルによるリンク)FY YR SMM SK KM NC SKM TM MR TSS
今回の出演者の中で一番心配しましたが、杞憂に終わってよかったです。
とにかく、声がしっかり出てしっかり歌い通せたことだけで合格でしょう。
今後は、やはり譜面を少しでも読めるようになってほしいことと、覚えつつある発声にさらに磨きをかけてほしいことです。
課題はブレスを腹部で出来ることと、喉を開けた状態ということを実感できることです。
更に今後への継続によって、発声を覚えてくれることを期待しています。
皆さんの紹介でも話しましたが、話した通り集中力の良い演奏になって素晴らしかったです。
1曲目はさすがの声楽初ステージで上がったようですが、そこはステージ経験者らしく、立ち直って、あとはするすると終わりまで堂々と歌いきってくれました。
彼女も呼吸です。胸で息をいっぱい吸ってしまうことから離れ、少しで良いので腹筋で呼吸することで歌声が生まれる感覚を速く覚えてください。
彼女も初出演ですが、ステージ経験は豊富な方です。
ただ 恐らくこの点が難しさにつながっていると思いました。
技術の方法のことではなく、いかに声楽発声を覚えて実行するか?という意識部分が中途半端にならなかったでしょうか?
彼女が表現したいスタイルは、声楽発声でも十分に実現可能なのですが、おそらく声楽発声に対する固定観念が根強くあるのだと思います。
発声はそれほど単純ではなく、基礎の基礎が判れば、悪い意味でのオペラ歌手的な表現にならず、かつマイク無しで歌うことも十分に出来ますので、今後はくれぐれも
その点の発想の転換をして、改めて発声の基礎を覚えて行ってください。
2曲とも難曲でしたが、無事に歌いきりました。
彼女はレッスン歴は長いようですが、おそらく本番はあまり多くないと思います。
その意味では、こちらに来られて初めての本番ということで、安定して歌い通した部分を評価します。
ただ、これまでの短期間で教えてきた発声は、まだ本番では活かせませんでした。本番を聞かせてもらっても、やはり中低音の発声が大事だと思いました。
特に、中低音の発声を重点的に練習し、身に着けて行ってください。
特に地声にならずに響きを作る中音域の発声が要になるでしょう。
優しく包み込むような気持ちの良い歌声でした。
ただ、発表会で歌うことが恐らく初めてだったのでしょう。上がっていたためか?発声が思うようにいかないもどかしさを感じました。
レッスン室では、相当力強い声で歌えていましたが、レッスン回数はまだ足りず、定着には至らなかったと思います。
あるいは、意識できたと思いますが、本番で実行するのは難しいです。
レッスンでも、本番で上がる分を差し引いて、自分の体を操って歌う部分に、より目を向けて練習して行かれるよう望みます。
経験がある方だけに、高音発声も無難に出来て、そつのない演奏になりました。
しかし、客席から聞いて(見て)いると、思った以上に力が入っているのが見て取れました。
恐らく、力を込めている割には声が飛ばない、と感じていると思います。
頭声の強い発声になっているため、かなりな息を使っていると思われます。
今後は、呼気を使い過ぎないでいかに響かせるか?という視点を持つために、中音域の声作りを大切にするべきと思いました。
結果的に換声点以降の高音発声に良い影響があると思います。
これまでの何度かの試演会経験と発表会の経験により、本番の押しの強さが磨かれた感がありました。
ただ、そのために、というか本来がステージが好きなのではないか?
上がるのだが、上がりながらもステージが楽しくて仕方がないようにも思えます。
これは、他の人に比べて大きなアドバンテージであると同時に、 恐らく大きな課題はそこにあるのではないか?
単なる技術の問題よりも、その上がり方の中に彼女が知りえるある状態があり、
そのことが技術的な課題を遠ざける要素があるのではないか?
ちょっと難しいことを書きましたが、考えてみてください。
TM
力まないで楽に歌う、ということを教えたせいか、その点ではカンツォーネにふさわしい歌声表現を意図されていたようで好感が持てる演奏だったと思います。
声楽演奏というと、どこでも声量豊かに歌い過ぎる演奏が多いと思っています。
その意味で、今回の演奏は成功でした。
あえて言わせてもらえば、もう少し息漏れではない集まった響きによる、Mezza
voceが出来るよう、発声を覚えて行ってください。
これまで、何回かの試演会と発表会に出てきましたが、その中で最高の出来栄えとなりました。
ようやく、私が教えた発声を覚えて本番でそれが使えるようになったのだな、と喜びました。
あとは、高音への換声点の通過です。だいぶ良いですが、あと少しの感があります。
今後の更なる精進に期待します。
ヴェルディの歌曲は安定して無難に終始できました。しかし、今さら私が言うのは問題かもしれませんが選曲として相応しかったのか?という疑問を感じました。
相応しくなくても、勉強になるという意味では良かったと思っています。つまりご自身がどう思えたか?を知っていもらえることにあります。
モーツアルトのアリアは、前半が心情吐露を活かしたとても良い歌になりましたが、後半のレッジェロの声の技術の見せどころでは未熟さを出してしまいました。
本格的なレッジェロの歌声を教える難しさを感じてはいますが、まずレッジェロというキャラクターありきの前に、もっと基礎的な発声があると思って教えて来たつもりです。
その点、彼女自身が本当に実感できているのか?そしてそのための選曲を考えていくことが、大きな課題と思いました。