11、楽器としての扱い方について

人間の声は他の楽器で言うと弦楽器が一番当てはまりやすいと思うので、弦楽器で比較します。弦楽器というものは、太い音低い音の場合弦が太くゆるく張られています。そうしないと音域に即応した音が出ないからです。同様に高い細い音は細く強く張られて弦をならしますね。声も同じです。低い声は声帯全体がゆっくりとゆるやかに振動しないと出ません。高い声は声帯自身が適度な緊張感を持って細かい振動を作り出さなければならないのです。

なんども書きますが、声帯は楽器です。どんな楽器でも練習してその楽器が持つ最上の音を出さないと、本当の音楽を奏でることが出来ません。最上の音とは、楽器そのものが持っている音を出す最大限の能力を発揮することです。そのために管楽器なら運指法から呼吸の使い方唇の使い方、呼気の出し方コントロールの仕方を学ぶわけですね。弦楽器ならボーイング(弓の使い方)、弦の鳴らし方、同様に運指法、これらを基礎訓練を通して学ぶわけです。

声も似ていますが、楽器を扱うこととの大きな違いは、自分の体の中に楽器があるということです。他の楽器と比べて大きな違いは、音色の差というものがなかなかつかみにくいことなのです。音色というものは、実は、音質だけだと思われていますが、そうではなく音程ということにも大きな関係があるのです。自分一人だけで練習していると、声が大きくなり過ぎる、音程が悪くなる。これが一番の弊害です。

特に、低い声と中音部、高い声、この音域による違いをうまく感じて、声帯を使い分けることが出来るようになるまでは、独習だけに頼らずに、かならず良い指導者について、学ばなければならないのです。

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