手押しの井戸ポンプは、弁にあたるものが、ポンプ内の上下に2つついており、その2つの間に水がたまると、弁が水圧で閉じますから真空状態が発生しやすくなり、
弁が水流で空いた瞬間に強い気圧の落差が生じて、深い井戸の底から水を引き上げられる、という理屈です。
この詳しいことは、ネットでググると出てきますので、ここでは解説しません。
このことが、ブレスをするときに少しあくびの状態を作りなさい、と言われてきたことに似ている、と思ったのです。
感覚的に、喉頭の上部から上咽頭にかけて、一つの気圧の違う空間を作る意識があり、実際にそれが上手く出来ると声が出やすいのです。
これから書くことは、私が感覚的に想像して考えた仮説であることをあらかじめご了解ください。
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仮声帯という第二の声帯が声帯の上に覆いかぶさってありますが、声帯とこの仮声帯の間を喉頭室と呼ぶそうです。
正に小さな空間があるわけです。
この空間に、前述の気圧の低い状態が出来ることが、あくびをすることと関係あるのではないか?
と思った次第です。
この発声時にあくびを、ということが、様々な悪弊というか、悪い結果を招くこともあります。
必要以上に喉を下げようとして、舌根が奥に入り込んで、喉頭の上をふさいでしまうために、暗い歌声になり、♭な音程になってしまうことが良くあります。
これを団子声と良く言われるのです。
ただ、このあくびの使い方が上手く行くと、余計な呼気の漏れを生じないで効率よく呼気を使った歌声が発声出来るのです。
つまり声帯の上に負の気圧の層があれば、息は余計に出て行こうとせず、手押しポンプに当たる腹筋の力で呼気が吐出されることで、閉じていた声帯から必要なだけの呼気が出ていく。
だから、余計に息を使わない発声が出来る、という理屈です。
ある程度発声を覚えて、息のコントロールが出来て歌えるようになった人が、お腹(横隔膜)と喉とが密接に関係していると実感出来るのは、このことだと思います。
もし声帯の上が正気圧であれば、ちょっと声帯が開いただけで大量の呼気が吐出されてしまうでしょう。
これが正に呼気のコントロールが出来ていない、初心者の歌声に当たるわけです。
呼び水を、と書いたのは、この第二の息の層を呼び込むことが、呼び水に似ていると思ったわけです。
私が考える声楽の呼吸において、この喉とお腹との相関関係がなければ、真の腹式呼吸の完成には至らないと考えています。
従って、お腹の使い方だけ幾ら研究しても、それはバランスを欠いた呼吸法と言わざるを得ないのです。