声楽の古典的な練習曲といえば、コンコーネの50番というやつです。
これには声楽学習初期、ほどほどにお世話になりました。
しかし、自分の場合は、ただ譜読みして先生のレッスンで1回歌うだけで終わりでした。
何かを言われた記憶もないし、勉強になった記憶はありません。
それに、元々この練習曲がどうも好きになれず、義務的にやっていただけ、という記憶しかありません。
しかしながら、今、アマチュアの生徒たちに教えるようになって、この練習曲の持つ意味を、深く考えられるようになりました。
今頃遅いって!?
私がこの曲を指導するときのポイントは・・・
単母音で歌ってもらいます。
人それぞれ発声の癖がありますので、母音をAにする時もあれば、EあるいはIでやるか決めます。
場合によってはUも使います。ただ、Oはほとんど使いません。
なぜか?というと、この母音固有の癖がありますが、ほとんどの人の場合、舌根を固くする傾向が出ますので、
単母音の場合、大体が子音を付けます。LかJa(や)です。Mも良いです。たまに、部分的にGを使います。
この子音の選び方も、意味があります。
1、フレーズの声の扱い方。
2、短いブレスのやり方。
3、音楽のスタイル
この3点が大事です。フレーズの声の扱い方というのは、どこに響きの力点を置くか?短いブレスで、喉のフォームを壊していないか?
この2点、特に1の問題は、楽譜には書いていないからです。
歌声のフレーズというのは、楽譜に書いていないことを、やらなければなりません。
声楽の声楽らしさ、というのは正にこの点に尽きると思います。
声量や声質、音域も大事ですが、いかにフレージングが自在に出来るか?が重要になるからです。
短いブレスは、喉の状態を変えずに、腹筋だけで息を入れる方法です。
そして「スタイル」ですが、コンコーネとかその他のイタリアの古典的な練習曲は、そのほとんどが19世紀の音楽に固有の歌唱スタイルが基本になっていますので、
その点を考慮した上で、利用すべきでしょう。
ドイツやフランスにも、これらに似た練習曲集がありますので、そちらを選ぶ理由がある方は、積極的に選んでみる価値も大いにあるでしょう。
最後ですが、練習曲を使うことは、絶対条件だとは思いません。
私自身は、練習曲ではなく、実際の曲に数多く当たるこことが、練習になっていました。
ただ、イタリアのオペラを徹底的に勉強する人、レパートリーにしてプロになろうという意思を強くお持ちの方は、やっておいて損はないと思いますし、
積極的にやる理由はあるでしょう。
いずれも、良い指導者について練習されることは、絶対条件にしたほうが良いです。
なぜなら、単なる声域の問題や声質だけで立ち行かない、フレージングのテクニックは、独学ではなかなか分からないことが多いのです。