レッスンでは、コンコーネと呼ばれるイタリアの19世紀に作られた母音で歌う練習曲を使うことが時々あります。
しかし、個人的には、練習曲の必要性をあまり感じていません。

特にこのコンコーネという練習曲は、イタリアのある時代に特化した音楽のスタイルを中心にした、歌唱表現を練習するために作られたものだからです。
私は初めてこれに接したとき、そのメロディと音楽が奏でるスタイルに驚いたものです。
声楽は、こういうことを練習して上達するものなのか!と思ったほど。
この、どこか大げさで19世紀的なスタイルには苦手感を持ちました。

しかし、指導をするようになった今、これらの練習曲は、一面的には有用と感じています。
たとえば、声楽の世界に初めて足を踏み入れたアマチュアの方が、声楽らしい曲に接して譜読みをする、という意味で有用でしょう。
ソルフェージュ的な使い方です。

音楽的には、少なくとも18世紀~19世紀末のヨーロッパの声楽作品を歌うための基礎作りには良い課題と思います。
このことを逆に見れば、それ以外の時代や国の声楽作品を歌うための練習曲としては、絶対的な必要性はないということになります。
日本では一般的ではないですが、フランスには近代の作曲家たちが作った、コンコーネのようなヴォカリーズの練習曲が結構あります。
フォーレ先生も作っています。

いずれにしても、指導者がしっかりした考えと指導力を持っていれば、練習曲を使わずに、一般の歌曲やアリアを用いて練習しながら、歌声を作って行くことが出来ると考えています。