幅広い音域をレガートに歌うためには、なるべく同質的な響きで歌うことが要求されます。
響きの質が広い音域に渡って担保されているから、フレーズのメロディ感が美しく音楽的に感じられるわけです。
このことが、器楽的な歌声という意味の一つの側面です。
音程も大事ですが、ここでは書かずに別記したいと思います。
声区というものの本質は、音域によって声の出方が違うことを意味しています。
例えば低音域は地声の傾向が強いし、高い音になるに従い裏声になりやすくなるでしょう。
これは訓練していない声の場合の、自然な成り行きを示しています。
声楽の場合はそのどちらかを使うのではなく、それらをミックスした声質を求めることになります。
このことを声区を分けないという意味にとらえるのであり、声区を分けるのはPopsにその傾向が強いでしょう。
前振りが長くなりました。
この声区の意識と発声のことは、歌声の音程にも関わるので大事なことです。
大きく2つに分けると・・・
低音から始まるフレーズ。
高音から始まるフレーズ。
としましょう。
低音から始まる場合、声のアタックで強く出すと地声傾向になります。
そのままフレーズを音程上昇すると、大きな声で歌わざるを得なくなるでしょう。
運良く音程がはまったとしても、音楽表現と関係なく大きな声で歌わなければならなくなる。
あるいは、突然ト音記号の真ん中あたりで声がファルセット的になってしまうかもしれません。
これはほんの一例で、大なり小なりこのようなことが起き、運が悪いととんでもなく音程の悪い声で歌ってしまったり、あるいはリズム感の悪い演奏にもなるでしょう。
つまり、発声と言う問題は、単に母音をある音程できれいに発声できたとしても、それだけでは音楽性のある発声とはとても言えないのです。