前回まで声区をまたぐフレーズの歌い方のコツを書きましたが、今回はもう少し具体的にどうやるか?を書きます。

基本的に高音から始まるフレーズは、案外難しくないのです。
それは、ブレスをして高い音程の声を出そうと思えば、自然に喉の状態が決まりやすいのです。

声が決まるための許容幅が狭いということです。
極論を言えば、出るか出ないか?二者択一しかないくらい。

しかし中低音発声は、その許容量の幅がとても広いです。
そのことが、一見優しく感じてしまうが、実はそこにこそ演奏家の音楽性を左右する落とし穴があるわけです。

発声上の許容幅が広いため、フレーズを歌おうとしたときに最初の一音のフォームが悪いと、フレーズ全体に及ぼす影響がとても大きい。
音程の正確さや果ては響きの拡がり具合まで影響が大きいため熟練を要します。

4点Fあるいは3点F以下の低音域の発声で注意するべきは、息の使い方です。
息を太く強く吐かないように発声することが、低音発声のコツです。
このためには腰背部の支えをしっかりして、横隔膜の反射的な呼気運動を抑制する必要があります。

低音ですからブレスをして声を出そうとすれば、喉は自然に低いポジションを取りますが、響かせようと意識する場所は高くした方が良いでしょう。
それは軟口蓋を上げるためです。
軟口蓋を上げることで、喉を下げようとする働きと拮抗して、息漏れの無い低音発声が出来ます。

ただし、この方法はバスの場合は極低音が出にくくなる方法になりますので程度問題です。

このように低音から声を高く集めることで、長く幅の広いフレーズを歌うときには特にレガートには有効になります。
なぜなら換声点(声の変化点)をまたいで上の声区にスムーズに移行できるからです。

次回は中高音の声区から低音の声区へまたぐフレーズの場合について書きます。