再びマルグリット・ロン女史のピアノで、フォーレのピアノ曲。
泣けてしまいますね~。なんという恬淡とした味わい。
ほのかに甘く、せつない、というのはこういうことでしょう。
押しつけがましくない音楽でありながら、どこか深く心に残るものがあります。
その姿は気高く香気に満ち溢れています。
フォーレの歴史では歌曲の「イスパーンのばら」と同時代ですから、まだ中期になる頃くらいでしょうか。サロン風の味わいですが、充分フランス的です。
ロン女史の演奏は、実に実に軽やかで語りかけるようで素晴らしいです。
良くあるようなもったいぶった、重々しさがまったくありません。
そして中間部の情熱も、ミスタッチを招きそうになっても貫いているところが素晴らしい。
高貴なサラブレッドの白馬を見ているようでありませんか!
こういう演奏を音楽的と言いたいです。
ロン女史は、1874年生まれの1966年没。フォーレより30年ほど下で、ラヴェルとほぼ同年代。
フランス近代音楽の時代を身を以て体験した方なのでしょう。
このピアノ音楽の演奏を以て絶対とは思いませんが、少なくともこのフォーレを聞くと
フォーレの音楽の何たるか、の少しは判るような気がします。
軽やかさと重みの絶妙な配分。
軽すぎると浅薄だが、重すぎると饒舌に過ぎ趣味が悪い。
音楽表現と云うのは幅が広く、一つの趣味でくくられるようなものではないな、と思い
我が意を得たり、と思いました。