ソプラノの生徒に教えていますが、最初からこれは落ち着いたテンポが良い、と信じていました。
そうしたら、このような20世紀初頭の録音は、とてもゆっくり歌っているものが多いですね。
私はこの曲は、軽快なテンポよりも、小舟にゆられて午睡を楽しむような、のんびりしたロマンチックな表情が本来なのではないか?と思っています。

しかし、1926年録音の女性歌手のものは、ほぼ現代に歌われているテンポです。
やはり第一世界大戦の前後で、世の中がかなり大きく変わったのではないか?と思われます。

今の時代は、ゆっくりしたものをゆっくりと落ち着いて楽しむことが出来なくなっているのではないでしょうか?
そういう時代風潮だからこそ、こういうテンポによる演奏が、逆に新鮮に感じるのですがいかがでしょう?
やはり古臭いでしょうか?古臭いからクラシックなのでは?と実はこの世界に入ったばかりの頃思ったことがあります。

芸術の真髄は、思い切りローカルで時代に偏った表現であるからこそ、国境と時代を超えて愛されるのではないか?
「時代や国境を越えた芸術の普遍性」などというようなお題目めいた言い方は、どうも文部省推薦みたいで、反抗したくなりますね。