ラヴェル ソナチネの2番「メヌエット」

これも思い出深い。やはり独学でピアノが弾けるようになって、必死で練習して弾けるようになった。
何が楽しかったって、このラヴェルのサウンドに生で触れられる喜びがあったことだ。
音楽の楽しみというのは、レコードで名人の演奏に触れることと、演奏会にたまに行くことしかなかったわけだが、
自分で弾いてみると、それは仮に稚拙なものであったとしても、音楽を自分の肉体が再現することで、名作曲家の精神に直に触れることが出来る、という一点にあることだと思う。
確かにあの時そう思ったのだ。だからこの道に入ったのだと思う。

こうしてラヴェルの一連の音楽を聴いて、改めて思ったのは、たとえばドイツロマン派の音楽に比べると、一聴するだけでは精神を揺り動かす要素が希薄なのだが、
実演してみると、驚くほど精緻で深みのある音楽の世界が拡がることだと思った。

車でいうと、3リッターV6ターボエンジンの車の後部座席に座る快感ではなく、自然吸気4気筒2リッターエンジンを自分で運転する楽しみ、とでも言おうか(笑)