いいですね。アバドが振った、ドビュッシー交響的素描「海」の第二楽章「波の戯れ」です。
聞きなれたブーレーズよりテンポが速いです。でもこの曲、これくらいが良いですね。
最近、家のステレオシステムを直して、復活させたので、古いLPレコードでこのドビュッシーの
「海」を何度も何度も聞いています。
若い頃と違って、なんだか抽象的な音の世界に遊ぶ境地が楽しいと言うか、あっと言う間に
時間が経つのが、うれしいやらなにやら?複雑な気分です。
歌も良いのですが、どうも抽象性に欠けてしまいますね。音楽としては。
音楽の美点は、本当は極限までの抽象性にあるのではないか?と器楽曲を聴いて思います。
想像の自由度が無限にあるように思えるのですよ。
この曲は、後のバレー曲「遊戯」の管弦楽法の基になったような、リズムと音色が音階のように使われるドビュッシーが後の作曲家に影響を与えるほどの技法を用いたラディカルな作品です。
とはいえ・・・そんな技法を内包しながら、少しもアヴァン・ギャルドな雰囲気を出さずに、優雅ですばしっこく、そして情熱的な表現を大編成のオーケストラで実現したドビュッシーは、天才的な作曲家だなと思います。
最後の大舞踏会の情熱の後で、さ~っと波が引いて行くように、あっという間に夜に変わる空を表現したコーダ部の表現など、本当に素晴らしいのです。
やはりフランスはあの革命的なシステムを内包しているにもかかわらず、そんな素振りをちらとも見せずに、クールに速く、また驚くべき乗り心地と操舵性を兼ね備えたシトロエンを産み出した国なのですよ!
そこが、ベンツを産んだドイツと違うところかな・・・