プーランクのこの宗教曲「グロリア」に始めて接したのが、確か21歳頃のことでした・・・
海外版の珍しいレコードを販売していた水道橋の富士レコードで買い求めた懐かしい思い出があります。
自分の行くべき進路が判らず、若い人生をとぼとぼと歩いていた、正にその通りに曇り空の水道橋の商店街を
とぼとぼと、漠然とした将来への不安を思いながら歩いていた自分を思い出すのです。
久しぶりに聴いたこの曲への感想です。
あたかも、美しい装丁の騎士物語のページをひも解くような気分にさせられました。
しかもそれは大人の読みものではなく、子供心をわくわくさせる子供向けの良く出来た絵本みたいです。
Laudamus teがこれほど明るくて衒いのない音楽になっているのは、プーランクをいて他に知りません・・・また、この合唱団、決して上手ではないですが、気持ちがとてもこもっていて
実にすがすがしい演奏だと思います。
彼の音楽は、どのような内容の表現であっても、決して尊大にならないところが美点。
この点において、この宗教曲は個性的な存在と言えるでしょう。
モーツアルトが出てきたり、ドビュッシーが出てきたり、バロック風な器楽合奏や、ワーグナーの尊大なオーケストラ編成が
見えたり、まるでごった煮のようなお料理です。
しかし、それはやはりフランスだけあって、美味しく出来ている(笑)
プーランクは、古典的な意味での一流や二流、という評価の枠を超えたクラシック音楽のあり方、そういう観点で現代的な音楽の先頭に立った作家でしょう。マス(大衆)時代のクラシック(階層)作曲家。もしかすると最後の、が付くのかもしれません。
そうそう、お勉強しなければいけません(笑)
発声の勉強になるので、このグロリアで一番美しいAgnus dei からの美味しい部分だけの動画を貼り付けておきます。
高音のMezza voceの歌いかたの典型が良く分かりますね。
それにしても、ミサ曲のAgnus Deiは、どの作曲家もなぜか?良い音楽を付けますね。
涙出ます・・