林光さんの作品、とくに合唱には、演劇的な背景に通じる要素が色濃く感じられます。
古典的なスタイルの音楽で、変に日本的な現代性みたいな表現を一切取らずに、
むしろ19世紀ヨーロッパ音楽のスタイル、中でもシューベルトやショパンのロマン派の
微熱感覚が色濃く表現されていて、聞く者の心を熱くしてくれる名曲だと思います。
その意味で、途中の転調が良く効いています。
間奏になると、あれれれ!というくらい。これは誰の曲だ!?というくらいですが、
日本的とか西洋的とかいうわけ隔てを感じないで、熱くなれる作品だと思います。
それは林光さんがアカデミックな中で純粋培養されずそこに埋没しないで、必要とされる
音楽を作り続けてきたからではないか、と思います。
無礼を承知で言いますが、陳腐とされる一歩手前に留まって、
表現の純粋さを醸し出している、と思うのです。
プーランクがシューベルトに大きな影響を受けていたのに似ている感じがしました。