この曲、ここではついに2回目ですか。お気に入りとなりましたね、シューベルトのこの曲。
というか、ここ数年、シューベルトの美しさに開眼いたしました。
まったく衒いがなくて、それでいて俗っぽさもありながら、気品漂う、という一粒で2度おいしい音楽だと思います。
衒いがない、という趣味は普遍性はないかもしれないですが、今の私には充分に魅力的な要素です。
衒いがある音楽は何?と問われれば、例えばシューマンであるし、またシュトラウスなどもそういう感が強いです。
この2楽章の素朴なメロディはどうでしょう?まったく気取りがなく、服装もお洒落さがなく、いわゆる女好きしない奴なのに、
魅力的な男、と云う感じ。
最終楽章を聴くと、ドイツという地政学的な条件が、ハンガリーなどの東欧圏とオーバーラップしていることが
良く判る印象です。ジプシー的な要素がありますね。
実は、シューベルトの音楽にはこのジプシー的な要素が色濃くあるような気がします。
さて、この録音は、タイトル通りの本物のアルペジョーネで演奏されています。
この音色がひなびた音色で良いですね。
チェロの勇ましさはないが、その分、女々しくて壊れそうな感じが繊細さを出しています。
伴奏ピアノも、モダンピアノではなくフォルテピアノでしょうね。
この両者を聴いていると、現代楽器に比べてピッチの微妙な緩さというのか、にごりというのか?
感じます。
しかし、それが音楽の古色蒼然とした、あるいはまた温かみに繋がっていると思います。
人間もこんな感じでありたいな、と聴いていて思います。
自分の歌曲の演奏も、こんな感じが出せたら言うことないな、と思います。