わたしは小さい頃から確かに音楽が好きでしたし、ものごころついた頃のことを思い出すと、歌も好きだったんだなと思います。
小学校4年の遠足のバス旅行で、独りでカラオケ歌ったくらいですし(笑)
中学3年の時には、合唱が嫌いなのに、無理やり合唱団に入れられたくらいだし。
同じく文化祭で同級生作曲の歌を、ソロさせられたこともあった・・・
で、私にとってのフランス歌曲。
中学校の頃、たまたまドビュッシーの音楽と出会うわけですが、歌曲もあるよということで、レコードを親父が買ってくれました。
ビリティスの歌とか、フランソワ・ヴィヨンの3つの詩とか、わけも判らずに聴いていたわけです。
そしてお定まりの歌詞カードを眺めながら聴いて、フランス語の読み方を覚える訳です。
歌詞カードを眺めながら聴くのは、小学校の頃にはまったビートルズを歌う楽しさと一緒でした。
シャンソンを改めて聴いたのは、ずっと後の事。
フランス歌曲の師匠である村田先生に就いてから。
先生がレオ・フェレのシャンソンを教えてくれました。
その時は、ボードレールの詩集「悪の華」に曲を付けた演奏のレコードで、すでに聴いて知っていたデュパルクの「旅への誘い」が驚きでした。
なんとものんびり、ほんわかとした、ミュゼット調の音楽に変身していたのが驚きだったのです。
ただ、デュパルクのそれよりも、はるかに歌詞の意味が良く判る歌になっていたことも、新鮮な驚きでした。
そんな、ささやかな自分の歴史ですが、フランス語の歌と言うのは、文字通りフランス語を歌うわけです。
歌うこととフランス語を語ることはまったく同等であって不可分な関係だ、とずっと思って来ました。
それは、もしかするとそれほど声楽演奏を聴いてこなかった、という個人的な経験のせいかもしれません。
プロの世界に入ることになって、歌うことは仕事だ!と思うと、同業者の演奏を好んで聴く気になれなかった。
勉強として聴くばかりでしたね。
でも、レオ・フェレやシャンソンの世界は、リラックスして聴けました。
嫌でもフランス語を覚えますね。
でも、本当はクラシックの声楽でも同じことだと思います。
フランス語に興味を持たないで、フランス歌曲を歌う、なんてことはあり得ないと思います。
フランス語が好きになると云うことは、フランス語の発音の美しさを知ることです。
発音の美しさを理解しないで、フランス語を扱うなどということは、私には考えられないのです。
その意味では、初心者の方は声楽の演奏を聴くより、このようなPopsから入る方が良いのではないでしょうか。
声楽演奏は声、にどうしても耳が行ってしまうからです。
そのことは間違いではないですが、どうもバランスを欠いてしまうように思います。

深い哀しみに引きずり込まれるような名曲だと思います。
しかもそれは甘美な世界。
フランスのガブリエル・ヤレドという映画音楽の世界の巨匠なのだそうです。
短調から長調に微妙に転調して、曲のさびに向かうところが、並々ならないものを感じました。
Je voudrais que tu m’enterresとフランソワーズ・アルディが歌うあたり、胸がしめつけられそうな気持ちになります・・・