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もがり笛、というものに興味を持つ理由は、元来が音に興味があるからです。
音楽に興味がある根本は、この音に興味があることからきていると思ってます。
そして、音に興味を持つきっかけになった原体験が二つあります。いや、3つかな?
いずれも、幼稚園にも入る前の頃の記憶。
裏の家でバイオリンの練習の音が聞こえたこと。
その頃は多分、楽器の音であることは、何となく漠然と分かっていたのだろうけども、そのことよりも、その音が驚くほど響くことに驚愕の思いを抱いたのでした。
今でも覚えておりますが、ド~ソ~レ~ラーという具合に、確か5度の集積をバイオリンで鳴らしていたように思います。いわゆる調弦というやつでしょう。
この無機質な、しかし音程の根源を表す完全5度音程の集積に、まったく神秘的な驚愕の思いを抱いたことは、今でも新鮮な思い出です。
しかも、明らかに拡声器など使っていないのに、なぜあれほど響いたのだろう!?という思いを強く抱きました。
楽器や人の声というのは、近くよりも遠くに響くものですね。
というか、そういう響きが良い響きなのだな~と思います。
もう一つは、風呂釜が家の外にあって、その風呂釜には犬小屋のお化けみたいな、覆いというのか、家みたいなものがあって、その中の
ガス釜の煙突から外に太い煙突となって伸びていまして、その突端が、風が吹くことでカラカラと音を立てて廻る構造の換気口になっていたのです。
その風が吹くとカラカラと廻る構造、その音、に異常に興味を抱いたことです。
この自然の風を利用した換気口付きの煙突は、尾篭な話で恐縮ですが、その頃は一般的だった、肥溜め便所の肥溜めからも延びていて
風が吹くと黄色い臭い匂いを辺り一面に振り撒いていたものでしたが、その匂いにもめげず、口をポカンと開けてカラカラと廻る換気口の空を見上げていたものでした。笑
3つ目が、以前にも書いたことがあります、虫の声です。
その頃、なぜ来ていたのか?が、両親が死んでしまった今は、不明なのですが、お手伝いのおばあさんが通いで来ていました。
そのおばあさん、確か親が話していた記憶では、横浜の郊外から来ていたそうで、ある日、お煎餅の入っていた硬いビニール袋に穴を開けたものに
綺麗な緑色の虫を入れて、私に「はい!お土産」と言ってくれたのでした。
その日の夜、机の上に置いたまま部屋を暗くして寝かかると、突然、物凄く良く響く音で、ツツツツツチーツチーツチーツチー
と、高周波倍音の強い響きで鳴き出したのでびっくりして飛び起きました。
セスジツユ虫の鳴き声 
この鳴き声も好みというものがありまして、キチンとしたストーリーというのか、スタイルのあるものが好きでした。
この虫は、ツツツツツと続けて最後に、チーツチーツチーツチ~~といって終わるところが、何とも感興を誘う、もののあはれを感じさせるものでした。
あたかも、日本の家庭用花火の傑作!線香花火の終わりのような、もののあはれを感じたものです。
幻想的な夏の夜の夢のような(まさか幼稚園の子供がそんなことを思ったわけではなく、現在の私が思うこと)イメージが甘い子供時代の懐かしい思い出として
今でも胸の奥底に眠っています。
今になって、仕事としてこれほど人の声に触れることになるとは、夢にも思いませんでしたが、こうやって思い起こしてみると、自分の子供時代の音の原風景に
その根拠があるのだな、といえるのかもしれませんね。