口を大きく開けなさい、というのは発声では古来良く言われて来たことですが、その意味はどこにあるのでしょうか?
口を大きく開けることで、素朴なレベルで声をしっかり大きく出すということが無意識に行えること、
大きく開けることをきっかけとして、喉を開くことに意識が至る、ということ。
この2つの要素があると思います。
これは特に日本人の小さな喋り声文化による身体性を考えると、素朴なレベルでは、判り易く実行しやすい、とても有効な発声法だと思います。
ただ、判り易く実行しやすいだけに、このことだけに陥ってしまうことによる弊害もあることを指摘したいのです。
弊害の一番は、口先が開いていても、喉は開いていないケースがとても多いこと。
口先を開こうとするがあまりに、子音発声も口を開くことで行うことによって、フレーズを歌う際に、発音のせいで音符の移行に時間がかかり、滑らかなレガートな歌唱が出来なくなること。
また、口先の発音のために、結果的に喉が開かない発声になってしまうことが往々にしてあります。
また、一般に口を大きく開ける発声は、声帯の使い方としては胸声傾向が強くなりがちなので、確かに声は大きいけれども、ピッチが♭気味で
力がいる割に飛ばない声、になり勝ちだと思います。
口というものはご飯を食べたり水を飲んだり(酒もOKですが)するためにありますが、歌うためにあるのではない、と言っても良いくらい、
口を開けることが直接関与しない発声、というものをイメージしてみてください。
すなわち、口から声が出て行くのではなく、例えば脳天から出て行ったり、頬骨から出て行ったり、目から出て行ったり、という具合に。
もっと言えば、声が穴から出るのではなく、声という振動が、頭蓋骨や頬骨やおでこを振動させることで、結果的に空間に声が響く、というイメージです。
次回、もっと具体的な口を開けないで済む発声法を書きたいと思います。
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